variable―ヴァリアブル― 1
「いんてぃあ?」
「・・・やっぱり君、記憶ないんじゃないの?」
「そんなことないですって。たぶん・・・」
「たぶん・・・なんだ」
「ええ、いろいろあったもんですから」
「いろいろって、何があったの?」
「えっと・・・その・・・。信じてもらえないでしょうが・・・」
僕はさっきまでのことをおおまかに説明した。
ユリエラは驚いた顔をしていたが最後まで真面目に話を聞いてくれていた。
「つまり、その声が聞こえて気づいたらここに寝かされていたと?」
「はい・・・」
「たしかに信じられないような事ばっかだけど、
話に出てきたヴァリアブルとかいうのが実際にそこにあるし、
100%嘘ってことはないみたいだね」
「わかってもらえたならよかったです」
「んで?君はこれからどうするの?」
「声を信じるとしたら、今、最終適性試験が始まっているということですので、
なんとかクリアしたいと思っているんですが・・・」
「クリアって言っても何するかわかってるの?」
「そうなんですよ。
ヒントも何も無しの状態なのでどうしようもなくて・・・。
さっきまでだったら紙がその後の目的を示してくれてたんですが、
それも無いですし・・・」
「それは今、君は困ってるってことだよね」
「え?まあ、そうですけど」
「ふふふ、もう心配はいりません。私があなたを救ってさしあげましょう!」
「・・・はい?」
*
「ところでユリエラさん?どこへ行くのでしょうか?」
「ん?それは着くまでのひ・み・つ。
それと、さっきから気になってたんだけど、その敬語とさん付けはやめない?
慣れてないからなんだか気になるんだ」
「ああうんわかったよ。なら、君のことは何て呼べばいいかな?」
「さん付けとファミリーネーム以外ならなんでもいいよ。
ちなみに、周りからはユリって呼ばれてるよ」
「それじゃあ僕もユリって呼んでいいかな?」
「うんいいよ。じゃあじゃあわたしは君のこと何て呼べばいい?」
「僕も何でもいいよ。あと、一部の友人からはエコって呼ばれてるね」
「それじゃ、エコに決定!」
「了解。ところでその目的地にはいつ着くの?」
「ああそれなら、ほらそこだよ」
ユリが指し示した先には扉が1つあり、
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた札が掲げられていた。
「さ、入って入って」
「僕、関係者じゃないけどいいの?」
「気にしない気にしない。こんな札ただの飾りだから」
「それならいいんだけど・・・」
*
扉の中は少し大きめの教室だった。
黒板があり、教卓があり、机と椅子が規則正しく並んでおり、
掃除用具箱と思われるロッカーがなぜだか大量に設置されていた。
「なーんだ、まだみんな来てないのか。
ちょっと待っててエコ、みんな呼んでくるから」
そう言うや否や超スピードで部屋から駈け出して行ってしまった。
「あ、ちょっと待っ。・・・行っちゃったよ・・・」
一人残された僕はとりあえず近くにあった椅子に座って待つことにした。
作品名:variable―ヴァリアブル― 1 作家名:ファーストウッド