variable―ヴァリアブル― 1
shift world
キーンコーンカーンコーン
突如鳴り響いたチャイムの音に目を覚ますと、
そこは学校の保健室のような場所で、
僕はベッドに寝かされた状態にあった。
遠くからはがやがやと賑わう声が聞こえ、
生徒がいるらしいことが分かる。
「・・・学校みたいだけど、なんでこんなところに?
さっきまでのは夢・・・じゃないみたいだな」
枕元には球の状態のヴァリアブルが置いてあった。
これがあるということは、さきほどまで適性試験とやらを
受けていた記憶は本物なのだろう。
(あの声・・・最終試験とか言ってたな。
てことは、ここが試験場なのか?)
ひとり、頭を悩ませていると、廊下から足音が響き、
部屋のドアが開かれる音が聞こえた。
だれかが中に入ってきたようだ。
足音は現在自分がいるベッドの方へとだんだん近づいてきた。
ふと足音が止み、ベッドの周りに掛けられたカーテンが開かれた。
「あ、気がついたんだね。よかったよかった」
カーテンを開け顔をのぞかしたのは、
見慣れない制服を着た同い年くらいだと思われる少女であった。
髪は栗色でポニーテールの型をとっており、
制服の上から塗料で汚れたエプロンを羽織っている。
「それにしても驚いたよ~、美術用具室に画材取りに行ったら、
知らない人が倒れてるんだもん」
「すいません、ご迷惑をおかけしました」
「謝らなくてもいいよ、責めてるわけじゃないから。
それで、どうしてあんなところで倒れてたの?」
「あ~、えっと、ごめんなさい。自分でも何でかわからなくて」
「え?わからないって・・・もしかして記憶喪失!?」
「あ、いや、別にそういうわけじゃないですけど・・・」
「な~んだ、残念」
「ところで、その・・・ここはどこでしょう?」
「ん?ここは私立ファミニス学園第三校だよ」
「そ、そうですか」
聞いたこともない学校名である。
人がいるだけましだが場所も目的もわからないという状況からは
抜け出せてはいないようだ。
(これからどうするべきか・・・)
「どうかしたの?」
悩んでいるのが顔に出ていたらしく、少女が心配そうに尋ねてくる。
「な、何でもないです。
心配してくれてどうもありがとう。
あ~え~っと・・・」
「あ、自己紹介がまだだったね。
私、この学園の1期生のユリエラ・カルティリアっていいます。
どうぞよろしく。」
「あ、どうも、僕は彩涼工児っていいます。
こちらこそよろしく。」
「ん?もしかして漢字の名前?」
「そうですけど・・・」
「うわーすごい、始めて見たー」
「そうですか?僕からするとユリエラさんのほうが珍しい名前ですけど?」
「え!?ほんとに!?いったいどこの人?」
「日本ですけど」
「日本?聞いたことないなぁ」
「聞いたことないって・・・今いるここのことじゃないですか?」
「え?違うよー。ここは工業発展世界一、フルファンス大陸の
極東の国、インティアだよ」
作品名:variable―ヴァリアブル― 1 作家名:ファーストウッド