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ファーストウッド
ファーストウッド
novelistID. 9116
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variable―ヴァリアブル― 1

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激しい光に目を閉じること2~3秒。
 「っ!?ここは・・・」
光も収まり、目を開け辺りを見るとそこは、
さきほどまでいた部屋に似た雰囲気の大きなホールのような場所だった。
頭の中に響いたあの声はすでに聞こえず、静かだった。
ふと足元を見やるとあの球、<ヴァリアブル>が転がっている。
なんとなくだがこれから役に立ちそうだと思い拾い上げようと手を伸ばした。
すると手が触れた途端、球は光だしみるみるうちに形を変えていく。
光が収まると、そこには一振りの剣となった<ヴァリアブル>があった。
全長はおよそ70cm、刃の部分が50cmほど、柄が20cmあまり。
片刃であり、柄の先にはジェット噴射をするための穴があいている。
しっかりと鞘に入った状態である。
なぜ鞘の中が片刃とわかるか、なぜジェット噴射のための穴だとわかるか、
その答えは至極簡単なものである。
この剣を知っているから、いや、考え出したからである。
この剣はついこの間、趣味でやっているオリジナルゲームの製作時に考えだした
<機剣 アクセルセイバー>であった。
自分しか知り得ないこの剣が何故あるのか?
ここまで、あまりにも意識がクリアなので除外していたが、
これは自分の夢の中なのだろうか?という、
こんな状況に陥れば誰でも真っ先に思いつくであろう
考えが今更ながら湧いてきたところである。
その後、頬をつねるというベタすぎる行為をしてしまってから知った、
頬っぺたをつねってもそんなに痛くはないということを。
 「それにしても、アクセルセイバー・・・いい。
  やっぱり実物で見ると迫力が違うな。
  これって抜けるのかな?」
鞘の中が気になり、剣を手に取る。
重さは想像通り、およそ1.5kg程であった。
鞘の中も想像通りのデザインだ。
やはりここにある剣はどこからどう見てもアクセルセイバーであるようだ。
ふと背中に違和感を感じ振り返る、が何も無い。
しかし背中の違和感は取れない。
気になり背中に手を回すと紙が貼ってあった。
紙には
『         ヴァリアブルの使用方法と注意
    ・ヴァリアブルは認証された本人のみが使用できます。
    ・ヴァリアブルは使用者のイメージにより形、大きさ、重さ等を
     自由にシフトすることができます。(一部例外あり)
    ・ヴァリアブルをシフトする際は使用者の精神力を消費しますので
     連続での使いすぎにご注意ください。
    ・認証完了後は使用者の過去記憶から最新の武器情報を検出し
     自動的にシフトします。(認証後はもう一度本体に触れてください)
    ・その他、機能は使用者のイメージにより追加することが可能です。

と書かれていた。
この説明通りだとするとこの剣も納得がいく。
しかし、なぜそのような物があるのか?なぜ自分が使うことになったのか?
といった、疑問は増大する一方である。
                *
この先どうするべきかと考えを巡らせていると、
 「ゴオオォォォォォッ」
突如、ホール全体に雷のようなずぶとい咆哮が響き渡った。
 「!?」
すぐさま音のした方向を見ると、
さきほどの黒い獣がこちらへ向かって爆走中であった。
しかもさっきまでよりも明らかにスピードが上がっている。
 「くっ、まずいな・・・」
ここはあの都市っぽいところとは違い障害物も無く、狭い。
隠れる場所も無い状態では逃げ切る事はほぼ不可能だろう。
さらに自分はそんなに運動ができるわけでもないので、
持久力的に、もって10分程度だろう。
だが、逃げたとしていったいどうなる?
この先どこへ行くべきかもわからない状態で逃げていたところで、
何も変わらない。結果、体力が尽きてゲームオーバーだろう。
 「・・・こんなところで死ぬのはいやだな」
もう覚悟は決めたあまり乗り気はしないがこの剣を使ってあいつを倒す。
おそらくこれが第2適性試験なのだろう。
 (ここまで流れに任せてやって来たが、
  こうなったら適性試験をクリアしてこの先へ行ってやる!)
剣を構え、獣の動きを見るため少しばかり右へ移動するが
やはりさきほどと同様に方向は変えず真っ直ぐに進むのみである。
 (これなら・・・)
さらに右に動き、攻撃が当たらない場所に移動する。
構えを居合へと変え、タイミングをとるために柄をタップする。
トンッ、トンッ、トンッ、トンッ・・・ 
 (・・・今だ!)
 「一閃」
獣が横を通る瞬間、切り裂くことに成功した。
確かな手応えはあったが、獣に外傷は見受けられない。
代わりに獣の頭上に体力ゲージのような物が現れていた。
 「まじめに、ゲームなのか!?」
ゲージは1割ほど減少していた。
同じ方法だとあと9発は当てなければならないようだ。
獣は向きを変え再び突進をしてきていた。
こころなしかスピードが上がっているように見える。
僕はもう一度、居合を放ち体力を削りにかかった。
ゲージはまたしても1割程度減っている。
やはり獣はある程度進むと向きを変え突進してきた。
またしてもスピードが上がっているように思える。
その疑惑は5発目に確信となった。
獣は始めのころとは比べ物にならないくらいのスピードで
こちらへと突っ込んでくるようになった。
おそらく60km/hほどのスピードが出ているのだろうと見受けられる。
 「これはまずいな。
  これ以上早くなられたら避けるだけで精一杯だろうし。
  急所とかに当てて、あと一発くらいで倒すしかないか」
見た限りでは急所は頭である可能性が高いが、
急所があるかどうかすらわからない相手であるし、
頭を狙うとなると次の突進を避けるのは難しくなるだろう。
おそらくこれが僕にとっても獣にとっても本当に最後の一撃となるだろう。
 (まあ急所に当たったからといって、
  残り半分の体力が0になるとは限らないけどね・・・)
不安は残るが意を決して急所を狙うことに決めた。
だがこの策を成功させるには、
アクセルセイバーに内蔵されたジェットエンジンの力が必要不可欠である。
いくら見ためがイメージ通りであっても、中身まで同じかどうかはわからない。
 「とりあえず、ジェットが出るか確かめないとね」
ジェット噴射には柄にあるボタンを押すという、
シンプルかつ簡単な方法を起用していた。
ジェット噴射の効果としては敵に向け直接噴射することで、
ダメージを与えるまたは吹き飛ばすといった効果の他、
ジェットによって自分が飛ぶといった効果も期待している。
今回は後者の効果を使うつもりだが果たして上手くいってくれるだろうか。
                  *
獣は僕のもと居た場所を過ぎていった。
 「もらったぁーっ!」
ジェットを使い猛烈なスピードで獣へと突っ込んでいく。
獣は方向転換をしたばかりでまだ走りだしておらず、
こちらを向いて止まっているのと同じ状態である。
激しい衝突音を放ち獣の頭に深々と剣が突き刺さった。
僕は遠目に獣の頭上を確認する。
ゲージが0になっていた。
黒い獣は音も無く光に包まれ消えていった。