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雪のかおり

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 気付いて! 運転手さん。私を巻き込まないで。そんな心境です。雪国の道路は、道路の部分だけ露出し、雪の壁がズガーンと道路にそって続いています。なので前後から除雪車がきたときなど軽く死を覚悟します。逃げ場がありませんから。
 よく考えれば、除雪車が接触することはないので両端からきた除雪車につぶされるということはないのですが、そこは子供。豊富な想像力であることないこと考えます。
 中学生のときでしたか、屋根を雪が滑る屋根にしました。雪下ろしの労力がぐっと減ります。そんなある夜、私はふと目が覚めました。草木も眠る丑三つ時。もちろん家でおきているのは私だけです。と、
 ぴちゃ……っ ぴちゃ……っ
 なんと外から誰かが歩く音がします。しかも、すぐ家のそばを! 私の部屋のしたを誰かが歩いています。でも、そこに道路はありません。
 まさか泥棒!!?
 私は飛び起きて一階に降りると、居間の電気をつけました。あまりのてんぱりぐあいに、両親を起こそうということも思いつきません。ただ「私がこの家を泥棒から守らなくちゃ! 盗られるようなもんないけど」と変な使命感に燃えて、恐怖でガタガタしながら居間にいました。
 十分もたつと寒くなり、もういいだろうと幼い私は部屋に戻ります。ところが
 ぴちゃ……っ ぴちゃ……っ
 またあの足音がするのです。もう一度居間の電気をつける→寒くなって戻る。→まだ足音がする。
 そんなことを三回も繰り返したとき、私はキレました。怖かったですが、意を決して歩いている人物を見極めようと、窓を開けました!

 しかし、そこには誰もいなかったのです。

 ぞわー。私は一気に背筋が寒くなりました。けれども、ずっと足音は続いているのです。そして、気付きました。
 滑る屋根から雪が落ちる音だということに。
 私は、心底両親を起こさなくてよかったと思いました。子供の想像力、おそるべし。 そんな経験を踏まえて国語の時間に読んだ句がこれです。

晴れた日には屋根の下に雪の足音

 五七五のへったくれもありあませんが、クラスのみんなで一句ずつどこぞの賞へと先生が応募させました。もちろん受賞なんてしませんでしたが。
作品名:雪のかおり 作家名:安瀬武一