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独占し独占され、それに従順する自分に向けられた姿こそが確かな愛情だと考えていた誤り。愛情なんて力で繋ぎ止めようはあろうはずもないということを。
自分以外の者に向ける一句挙動の全てをその仕草さえも嫉妬に満ちた言動で力任せに投げつけてきた自分。拒絶されたのは自分ではなく、退けられる自分を自身で創りあげていたのではないかと。
悦司は、今自分が思うことが正しいのかどうかは分からない。だけど少なくとも沙希は自分という人間を気付かしてくれたのではないのかと思う。
離れて初めて知ること。
失って初めて分かること。
多分、全てがそういうものじゃないのかと。
離れてみて、初めて、
視える。
聴ける。
話せる。
なんて、そんなことが。
悦司は沙希のことを今でも忘れてなんかいない。だけど、別れた時に全てを断ちきらないと、立ち直れない位のちぎれるような想いを擁いていた。
会いたい気持ちや自分だけに想いを向けられたいと思う気持ちと同じくらい、誰でも何かに対する思いや考えが存在していて、そもそもそれらは同じ土俵で立つはずもないことを比べてみたり、優劣をつけてみたくなったり。
でも恋をするっていうのはそんな繰り返し。
正解のない自問自答に苦しんだ挙句、一番大切なひとを責め失ってしまうのかもしれない、と。
もしかしたら、沙希はそれを知っているから『ワタシはひとりとだけに向き合える相手にまだ出逢ったことがない』のかも知れないし、自分勝手なように見えるけれど、本当は何かと何かを比べたり正解のない答えを探したくなかったのかも知れないと悦司は思った。

 一年近く前に携帯を変えたとき、何気にコミニティサイトに登録した。ほんの暇つぶしのつもりだった。
ゲームや色んな書き込みを見たりして退屈な通勤時間の気休めくらいにしか思っていなかった。何かを期待なんてしていなかった。ましてバーチャルな世界での出会いなんて悦司は馬鹿らしいとさえ思っていた。
 それなのに――、と思う。
 バーチャルな世界で、見ず知らずの人たちと他愛のない会話をしてる中に、沙希のプロフィールを見つけた。
<男女で最良の関係ってどんなのかな? 皆さんはどう思われますう?>
 悦司は軽い気持ちで書き込んでみた。
<はじめまして、こんばんは。最良の関係って? やっぱり彼氏彼女の関係でしょ>
作品名:短く返信した 作家名:ヒロ