The SevenDays-War(緑)
マイッツァーの合図を受けた四名の騎士が、アーノルドに襲い掛かった。しかし、ルドラに剣の指南を受けたアーノルドには、騎士四人など物の数ではない。
剣を振る度に、一人、また一人と切り倒してゆく。
「面白い」
マイッツァーは周囲の兵士に手を出さないように命じ、剣を抜いて構えた。身体は半身。僅かに腰を落とし、剣を持った手を前に。刃は水平に。
「お遊戯の一等賞など、実戦では役に立たん」
アーノルドは剣を下段に構えて間合いを詰める。
刃渡りの長さで勝るアーノルドだが、それは小回りと速度に劣るということになる。ただし、それは使い手の能力が同程度である場合の話だ。
下段からの切り上げ。
アーノルドの放った時をも切り裂くような鋭い斬撃は、マイッツァーの剣を持つ手を音も無く切断し、切断された本人でさえも、地面に到達した際に発生した音でようやくその事実を知る。
しかし、彼はその事実を理解することは出来なかった。
なぜならば、地面に落ちたその物体が自身の利き腕であると理解するよりも早くに、アーノルドの二撃目が首と胴とを別々の個体に切り分けたからだ。
村のあちこちから怒号が上がる。ポポマの戦士たちが強襲を仕掛けたのだ。
アーノルドによって主要な指揮官は切り伏せられている。指揮系統が機能しなくなった軍隊は烏合の衆と呼ぶに容易く、また、同じ階級である小隊長同士が指揮権を巡って不毛の争いを始めるため、数が多ければ多いほど混乱は深まる。
そうして小隊同士の連携が取れなくなった軍隊では、団結したポポマの戦士たちに太刀打ち出来よう筈がなかった。
アーノルドは村の中央に立ち、ポポマの戦士たちとエルセントの兵士たちとの戦いを、その目に焼き付けていた。
決して目を逸らすことなく、そのすべてを刻み込む。
兵士たちの中には、何も知らずに駆り出されただけの者もいるだろう。その逆に、すべてを知った上で参加している者もいるだろう。
この戦場で、どちらであるかを見分けるのは不可能だ。
「誰のための騎士、何のための騎士」
アーノルドは剣の柄を強く強く握り締める。
ふと、背後に気配を感じて振り返る。
そこには、黒があったのだ。
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近