The SevenDays-War(緑)
地下道を抜けた先は、森の中だった。窪地にある村を見下ろせる場所だ。
アーノルドが何よりも驚いたのは、ポポマの戦士たちが集っていたことだ。
『身長二メートルで筋肉隆々。野蛮で粗野で知性に欠ける』
そんな風評通りの蛮族戦士たち。
草木をすり潰した塗料で全身を緑に染め上げ、静かな怒りをその身に秘め、戦闘開始の合図を心待ちにしている。
状況を飲み込めていないアーノルドに対し、ウマが重々しく口を開いた。
「アタシたちが奴らを誘き寄せたの。この村は窪地だから暗闇の地下道を通れないエルセント人には逃げ場がない。一気に殲滅できる。争いは望まない、けど」
アーノルドはウマの言葉を遮った。
「奴らは許せない。俺も戦う」
「相手はエルセント人なのよ?」
「ちがう。ただの悪人で、ただの罪人だ」
「アーノルド……」
「通訳してくれ」
アーノルドは作戦を提案した。その内容はこうだ。
まず、アーノルドが単身村に乗り込み、指揮官を斬る。命令系統が混乱すれば、戦術も何もない。そんな単純なものだ。
指揮官はマイッツァー・ダリオ。
派手な羽飾りが、遠目からでも目立つ。
アーノルドは堂々と歩いてマイッツァーの目の前に立った。
エルセント騎士の証を身に着けたアーノルドは、誰にも止められることは無かったのだ。
「これは珍しいところでお会いしますな、中隊長殿」
燃えるネテラウィスクの村の中央で、マイッツァーは数名の騎士に囲まれていた。今後の行動を決めていたのだろう。
「マイッツァー殿。なぜこの村を攻撃なさったのですか?」
「私は貴卿に名乗っただろうか?」
「答えろ、マイッツァー・ダリオ」
マイッツァーは口の端を上げてニヤリと笑う。
「農村の襲撃は蛮族の仕業ではなく、人間によるものだと判明しましてな。その襲撃犯の拠点がこの村だったのだ。そんな村におられるということは、もしや貴卿の差し金だったのではあるまいか?」
わざとらしい口調が、アーノルドの神経を逆撫でる。
「オマエの云う『人間』の中に、俺が含まれていないことを祈る」
アーノルドは腰の剣を抜く。
マイッツァーの周囲を囲んでいた騎士たちが反応し、それぞれに剣を抜いて戦闘態勢をとった。
「農村の襲撃は貴卿の仕業であった、と報告させてもらう」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近