The SevenDays-War(緑)
魂に七曜の方円セブンデイズを刻まれたエルセント人の死のエネルギーを、門と呼ばれる純血のポポマに取り込ませることで、異界との道を作り出す。
ポポマの戦士たちが、エルセント人と呼ばれる“パズゥが造り出した人間”を殺傷すれば、その場で門が開く。多くの場合、その現象が発生するのは戦場だ。
大森林に守られたポポマたちが、力を蓄えエルセントに侵攻するその日に発動する。それが封じられし古代の神々が隠し持っていた奥の手なのだが、皮肉にもそれを発見したのはエルセント人であり、多くのポポマはいまだ気付いていない。その要因は、千年の間に門となり得るポポマの数が減少してしまったことにある。
「話が大きすぎる」
アーノルドの呟きは、森の木々が擦れる音に包まれて消える。
エルセントの農村と何の遜色もない風景の中で生活を営んでいるのは、すべてポポマたちだ。
身長二メートルで筋肉隆々。野蛮で粗野で知性に欠ける。
それがエルセント人が持つ『蛮族・ポポマ』のイメージだ。
ここネテラウィスクに住むポポマたちはそうではない。
争いを避けるために共存の道を探している。その途中で、正反対の方法を見つけてしまうという不運に遭遇してしまったのだ。
「近くでエルセントの人間が死んだ場合に門が開かれるというのならば、森の奥へ逃げ込めばいい。そうすれば、門は開かれずに争いは起きない」
これはアーノルドが二晩悩んだ末に出した答え。
ウマは目を伏せて首を振る。ゆっくりと、寂しげに、悲しげに。
「アタシは共存の道を選んだ。森の奥に隠れ住むなんてできない」
頬をつたう一筋の涙。
「ウマ、聞くんだ。エルセントを動かしている人間は、同じエルセントに住む者たちでさえも見下している。共存しようという考えは少しも持っていない」
「アタシたちがそれを変えてみせる」
「そのための方法が毒殺か?」
違うだろ、とアーノルドは力強く言い放った。
「それを変えるのは俺たちエルセント人の役目で、そのために手を汚さねばならんとしても、お前たちポポマが手を汚す必要はない」
身支度を始めたアーノルドを、ウマは不思議そうに眺めていた。
「俺はエルセントへ行く」
「どうして?」
「俺は俺の役目を果たす。まずは今回の黒幕を始末する」
その瞳には強い意志が光っていた。
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近