The SevenDays-War(緑)
アーノルドが詰め所を離れて二日が過ぎた。
例に漏れず、一晩に付き一つの農村が炎に焼かれ、多くの死者が出た。
だが、生存者も多い。
如何に非戦闘員とはいえ、手をこまねいて殺されるのを待ったりはしない。
自警団を組織して見回りを強化し、日が沈む前に寝るなどして夜間の無防備な時間を減らしていたのだ。
そうして、生存者による目撃証言は無視できない数に膨れ上がったのだが、森に入ったアーノルドはそれを知る由もなかった。
この二日間で、アーノルドは様々なことを知った。その最たるものは、エルセント人とポポマの違いだ。
エルセント人は魂そのものに七曜の方円を刻み込まれている。不安定な『物質』である魂に刻むことで、事実上存在不可能な七芒星を作り上げたのだ。
一桁の数字で、唯一『七』だけが円を示す数値を割り切れない。
円環が世界を示すものだとすれば、七芒星が示しているものは世界に存在し得ないものだ。
エルセント人を始めとする『人間』は、七曜の方円によって魔界とのチャンネルを固定し、魔法という力を手に入れた。その代償として肉体強度と寿命とを犠牲にしてしまったが、充分な見返りを得た。
ポポマのような『古代人』もエルセント人のそれとは系統の違う魔法を使うが、その効果は格段に劣るものとなる。
「ポポマの女は誰でも門なのか?」というアーノルドの問いに、ウマは「違う」とだけ答えた。
ポポマを森へと先導した白き騎士ナウタラは、自らが封じられるであろう異界からの脱出方法をポポマに遺したのだ。その末裔がウマということになる。
しかし、千年という永い年月を経て、ポポマたちは平和を望むようになった。封じ込められてしまった神々を開放することは、再び世界に争いを呼ぶことになるのではないかと考えたのだ。
「雲の上で誰が世界を動かしていたとしても、アタシたちは何も変わらない。なら、余計な争いなんかないほうがいいに決まってる。ここは神様たちの世界じゃない。アタシたちの世界なんだから」
結局、アーノルドはウマを抱いていない。
それがウマの願いを踏み躙り、想いを否定することだしても、アーノルドにはどうしてもできなかったのだ。
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近