The SevenDays-War(緑)
アーノルドは、ユノフィアが死んだと聞いた瞬間に、胸にぽっかりと穴が開く感覚を覚えた。そして、たった一晩だけの付き合いしかなかった彼女に、淡い想いを寄せていたことを自覚する。
「気付くのが遅すぎるってんだ……」
自嘲するアーノルドに、ウマは切迫した表情を向ける。
「時間がないの。他に協力をお願いできる人がいないの」
「あぁ、そのつもりで来た。できることなら何でもやる」
アーノルドは周囲を見渡しながら、早足で歩くウマを追った。
外観から見た限りでは、ここが文明的に遅れている蛮族の村とは到底思えない。それがアーノルドが抱いた印象だ。さすがに王都エルセントとは比べるべくもないが、エルセント南部の農村とならば何の遜色もない。ただし、この村に限っての話だ。
やがて二人は一軒の家に辿り着いた。
「アタシの家。座って」
木を組み合わせて作られた机と椅子。そして奥へ続く扉が一つ。
椅子は竹で編まれているため、座り心地は軟らかい。
「ここはネテラウィスクという村よ。本当は外部との接触は禁止されているの。だから、村に招き入れるなんて以ての外」
アーノルドはその名前に聞き覚えがあった。
仮にも治安維持を任務とする詰め所の長。その手の噂は耳に入ってくる。
「毒を使った暗殺集団の村よ」
アーノルドの気配を察したウマが機先を制す。
「分かっている。口外はしない。それより……」
「そうね、本題に入りましょう」
ウマはアーノルドの正面に座る。その仕草は妙に艶めかしい。七年の月日は、少女を成熟した大人の女性へと変貌させていた。
「ポポマの村を襲撃した連中は、黄金の財宝があると思い込んでいるんだ」
アーノルドは、自身を襲った煩悩を振り払うために、必要以上に大きな声で話す。
「本当の黒幕は、財宝が存在していないことを知っているわ」
「では、何のために?」
ウマの瞳が、アーノルドを捕らえた。
「真の狙いは分かっているの。それを阻止するために、貴方の協力が必要なの」
「あぁ、分かっている。なんでも言ってくれ」
アーノルドは、自身に訪れた高揚感に似た感情の正体を掴み切れずにいた。
「じゃあ……」
ウマは一瞬だけ言い淀み、アーノルドは息を止めて続きを待つ。
「アタシを抱いて」
「よろこん……ハァ!?」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近