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The SevenDays-War(緑)

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「あとは任せる。もし戻らなかったときは……」
 そこまでを口にして、アーノルドは続きを飲み込んだ。
「お戻りを、お待ちしております」
 カーンは笑っていた。
 なんと不器用に笑うのだろうか、とアーノルドは思った。
 その顔には『任せましたよ』と書いてあった。
 かつて、フロンティアへと旅立つ友の背を見送ったとき、エルセント北門から旅立つルドラを送り出したとき、そのどちらにおいても、アーノルドはそんな顔で送り出すことはできなかった。
 信念と信頼。
 騎士が剣を振るうのは、その二つの理由だけだ。
 それに気付いたアーノルドは、これから騎士になるための一歩を踏み出す。
 アーノルドは笑う。ほんの少し、口の端をつり上げて。
「任せておけ」
 声ではない声。
 それは、全身より発せられた想いだ。

 大森林に足を踏み入れたアーノルドは、労せずしてポポマと遭遇することができた。
 大森林は急激にせり上がった台地の上にあるため、侵入できる場所は限られている。アーノルドの詰め所からは、真西に進んだ一箇所しか侵入できる場所がない。
 ポポマたちは、そこでアーノルドを待っていたのだ。
 アーノルドはカタコトの言葉で話しかけた。しかし、ポポマたちは流暢なエルセントの言葉で返事を返した。呆気に取られたアーノルドは、「そりゃないぜ」と一言だけ漏らした。
 村に案内される道中に、エルセントとの文明の差が開き過ぎていることを危惧し、その差を埋めるためにやっていることなのだと説明を受けた。
 案内された村は、大きく窪んだ盆地のような場所にあり、夜に火を焚いても森の外からは気付かれることがない場所であった。
 村の名を、ネテラウィスクという。
 一部の薬師と裏社会の者だけがその名を知るという、伝説に近い村だ。

「アーノルド!」
 村に到着したアーノルドの前に、若い女が現れた。
「もしかして、ウマなのか?」
 女は嬉しさを満面に溢れさせた笑みを浮かべて頷く。
「来てくれてありがとう。早速だけど時間がないの。力を貸して」
 まるで彼女が自分に会いたいと呼んでいたような言い回しに、アーノルドは思わず問い返す。
「俺を呼んだのはユノフィアじゃないのか?」
「いまのユノフィアは私。ルドラの通行証をイークウッドという男に渡したのも私。貴方が知っているユノフィアは、病気で死んでしまったわ」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近