The SevenDays-War(緑)
アーノルドがぽつりと漏らす。
「そのようなものはありません」
「噂が真実かどうかではない。ポポマの集落が本当に襲われていないのかを確かめたい」
「そういえば、先日出した斥候が戻ってもおかしくない頃ですな」
「カーン」
「どうぞ」
アーノルドの呼びかけに応えたカーンは、滅多に見せぬ微笑みを浮かべていた。
「訊ねにくいことでしょうが、私から率先してクチにすることはできぬものです」
「……では、教えてくれ」
アーノルドは一つ咳払いをする。
「地下には、何があるんだ?」
「大森林に黄金などなく、私はエルセントに連れて来られた際に初めてそれを目にしました。
地下にあるのは墓です。そこにはヤールーの霊が眠っています。
ヤールーとは、ご先祖様たちのことです。我々ポポマは何よりもヤールーを敬い、そして畏れます。
ポポマはヤールーの声を聞くことができます。きっと逆です。ヤールーは我々ポポマを導いてくださいます。そのため、迷うことなく大森林の中を自由に歩き回ることができるのです。
ですが、好奇心に負けて禁を破ってしまったポポマは、その導きを受けられなくなり、森を彷徨い歩いた末に……」
その末に、奴隷商人が仕掛けた罠に捕まってしまうのだ。
「千年前の魔大戦の折、ゲルパドの民であった私たちポポマは、国を失い土地を追われました。
半神半人の騎士ルドウラが引き付けている隙に、同じく半神半人の騎士ナウタラの先導で森に入ったのです。
その後、ナウタラは森と同化し、ポポマを守る大森林を成したとされています」
それは、神話と呼ばれる時代の出来事を語り継いだ話だ。
「肉体が朽ちたあと、魂をナウタラの元へ送るためなのだな」
カーンは深くゆっくりと頷いた。
「しかし、変わった方ですな。エルセント人はポポマを蛮族と呼び見下しているものと思っておりましたが……理解よりも更に深い何かをお持ちだ」
「名を継がせ、家督まで譲った先代のペディーニ卿ほどではない」
アーノルドは立ち上がり、カーンのすぐ隣まで歩いた。
「俺はルドラに、いや、ルドウラに会ったことがある。ただ、それだけだ」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近