The SevenDays-War(緑)
「門兵長時代に面識があってな。マイッツァーの顔も知っていた。向こうは覚えていないようだったが」
「ぐ……」
「言え! 何の目的がある!?」
アーノルドは声で圧力を掛け、眼光で射抜く。
「サンク卿は恐ろしい方だぞ」
次は囁くように優しくひっそりと言葉を発する。それは、引き渡してもいいんだぞ、という脅しだ。
「……間引き、だ」
沈黙の末に男が発したその言葉は、アーノルドが冷静を保てるギリギリの発言だった。
「フロンティアに向かわずに王都に居残った貧民区の者を、有効活用するためだ。王都を血で汚すわけにはいかない。蛮族の襲撃に見せかけて農村を焼き討ちし、そこに貧民区の者を移住させる計画だ」
「間引き? 有効活用?」
固く握り締められたアーノルドの拳が、わなわなと震える。
それに気付いた男は、虚勢を張ることも忘れて地面を這って後ずさる。
「待て、待て。中隊長にまでなっているのなら、お前も上流階級の出なのだろう? ならば、農民などはただの労働奴隷で、貧民区の奴らが王都の景観を損ねるだけの存在だと分かっているはずだ」
「生憎、俺は貧民区の生まれでな」
はたとアーノルドの拳がその震えを止める。
「その計画の全貌を話してもらおう」
アーノルドは、脇に控えていた衛士に急いでカーンを呼んでくるように指示を出すと、ふぅ、と大きく息を吐いた。
「これだけは伝えておく。お前の死は決定事項だ。人間としての尊厳を保ったまま逝くか、苦痛と屈辱にまみれて逝くか。お前が選べるのはそれだけだ」
アーノルドが身に纏った殺気は、この世のものとは思えぬほどの冷たさを放っていた。
* * *
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近