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The SevenDays-War(緑)

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「カーンの後を追い、事の次第を伝えろ。まだ間に合う」
「指揮官殿が参ります」
 事務官の声に、アーノルドは笑顔を作って振り向いた。
 ゆっくりと櫓の階段を上がってくる足音がする。神経を逆撫でする勿体つけた歩き方は、特権階級特有のものだ。
「わざわざ申し訳ない。以前は門兵長をやっていたもので、見晴らしの良いところが落ち着くのです」
「私はこの『義勇軍』の指揮官、ダリ……」
「お待ちください」アーノルドは相手の言葉を遮る。
「貴殿のお名前を伺ってしまっては、どなたの善意なのかが判明してしまいます。匿名で立たれた救国の士に泥を塗るような真似はしたくない。名乗らなかった無礼をお許しください」
「む、そうであったか。無粋な真似をした」
「我らに可能な最大限の協力をさせて頂きます。……ですが一つだけ。地下牢にはお近づきなりませぬよう、お願い致します」
 アーノルドは大袈裟に恭しくお辞儀して見せた。

 詰め所に夜が訪れた頃、アーノルドは地下に掘られた牢に足を運んでいた。
「何か喋ったか?」
 アーノルドは扉を開けるのと同時に、室内の衛士に問うた。
 衛士は首を横に振ることでその答えとしながら、自らも問うた。
「直接お尋ねになりますか?」
 アーノルドは一度だけ頷き、その答えとした。
 衛士は鍵を取り出し、奥の扉を開ける。
「どうぞ」
 扉の向こうには、暗黒に染められた通路が続いていた。
 一歩足を踏み入れると、ランタンの煌煌と燃える炎が存在の主張を始める。
 ここに足を運ぶ度に、ルドラが幽閉されているミンミ修道院の地下とは大違いだな、とアーノルドは思ってしまう。
 七年前、ミンミ修道院の地下に幽閉されたルドラは、自身の戦闘技術を伝授する見返りとして、アーノルドとの面会を望んだ。
 聖教会は、アーノルドを盾として優位性を確立しようと目論んだのだが、その行為はルドラの逆鱗に触れるものであり、人間による封印など無意味であるということを思い知らされる結果となった。
 そのおかげで、アーノルドは拘束されることなく今日に至っている。当然アーノルドも、ルドラによる剣の手解きを受けている。
 ルドラは、その気になればいつでも脱出することができたのだ。

 ―― この国を離れよ

「……何のために!」
 闇の最中で発せられたその声は、剥き出しの土壁に乱反射しつつ砕け散る。
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近