The SevenDays-War(緑)
「そんなことはありません」
いつもと変わらぬ語調からは、本気なのか気休めなのか判断することはできない。
「襲撃を受けた二つの村には、蛮族の女を奴隷として労働させていたという共通点がありました。おそらくは、それが襲われた理由なのではないかと」
「いつわかった?」
「今朝方です」
「そんなことを調べろなんて指示は出していないぞ?」
「昨夜、留守は任せると仰られましたので」
アーノルドと彼の補佐役となる事務官との付き合いは、かれこれ数年になる。この詰め所に小隊長として派遣されたときからの付き合いだ。事務官はアーノルドの上司であったのだが、いまでは立場が逆転している。
なんと不器用な付き合いをしてきたのかと、アーノルドは今更ながらに恥じた。
自分よりも経験豊富で優秀な男に意見を仰ぐことをしなかった。
それは、自分が騎士で、相手が事務官だったからだ。騎士ではないというだけで見下し軽んじてしまっていたのだ。
アーノルドは事務官の顔を正面から見据えた。
中隊長となり、事務官の上司となってからは初めてのことだ。
「俺は、どうすべきだろうか?」
事務官は、表情も声の調子も何一つとして変わらぬまま答えた。
「街道の宿場に、奴隷市があります」
ただ、その瞳には温かな光が宿っていた。
* * *
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近