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The SevenDays-War(緑)

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「蛮族ではありませんでしたか」
 事務官はアーノルドが持ち帰った事実を冷静に受け止めた。
「冷静だな」
「報復とはいえ、彼らが戦士ではない者を虐殺することはありませんから」
「詳しいな」
「彼らは決して野蛮人ではありません」
「それについての異論はない。少し考えたいことがある。今夜は一人にしてくれ」
「御意」

 翌朝、アーノルドは詰め所の兵士に命令を下した。
「各農村の長たちに通達。ここ数日のうちに村に住むようになった者がいないかどうか、回答を求めよ」
 運良く村を離れていて襲撃を免れた村人の証言で、ふらりとやってきた身元不明の男の存在が明らかになった。その男の死体は発見されていない。
 その男が村を訪れたのは五日前。最初の村が襲撃を受けた日の二日前だ。
「馬を使わずに、森から出て夜の内に到着できる村は?」
「我々の担当区域にはありません」
「担当区域内外を問わず、だ」
 アーノルドは苛立ちを隠すことなく、矢継ぎ早に質問を重ねる。
「西街道沿いの村はすべて到達できるでしょう」
「南地域では?」
「ヨーン湾にある漁村を含めると、十は下りますまい」
「その中に、襲撃された二つの村よりも森に近いものは?」
「あります」
「ではなぜそこを襲撃しなかったのだろうか?」
「二つの村には襲われる理由があったと言いたいのですな?」
「肝心の理由が分からないことには、どうしようもないのだが」

 コン、コン。

 執務室の扉を叩く音が、二人の会話を遮る。
「隊長、物見より報告です」
「入れ!」
 声に苛立ちの色が混じってしまい、すぐに「入っていいぞ」と言い直した。
 扉の開けて入ってきた兵士は明らかに怯えている。
 アーノルドは兵士の怯えた顔を見ると、すぐに片手を挙げて「すまんな」と苦笑いを浮かべた。
「報告とはなんだ?」
「大森林で再び火災が発生しております!」
「なんだと!」
 アーノルドは勢い良く立ち上がり、その勢いのまま机に拳を振り下ろした。
 冷静を失ったアーノルドに代わり、事務官が退室を促す。
「混乱しておいでのようですから、一言だけご注進申し上げますが」
 事務官の冷静な声がアーノルドの頭を幾許か冷まさせる。
「大森林の奥地にある蛮族の集落まで、僅か一晩でたどり着けましょうや?」
 アーノルドは、倒れるように椅子に腰を落とす。
「俺は馬鹿だ」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近