The SevenDays-War(緑)
―― 騎士になった。
―― 騎士になれば、守ることができると思っていた。
闇夜の向こうに、麦畑を踏み分けて進む一団の姿があった。麦を踏み倒す足音から予測できる数は、百や二百ではない。一団が森を目指していることは一目瞭然だった。
アーノルドは一団がすべて通り過ぎるのを待った。馬の脚ならば引き離されることもなく、また、逃げ切ることも容易だ。
アーノルドは後を追うつもりでここに来た。だが、彼はそれを思いとどまった。
農村の襲撃が野盗の仕業ではないことはすでに判明した。
単騎で突撃したところで返り討ちは必至。アーノルドには危険を冒してまで追跡する理由はない。
一団がすべて通り過ぎた。
頼りなさげに輝く星空を見上げたアーノルドの、その眉間によった皺が彼の思いを代弁する。
農村の襲撃は、野盗の仕業ではなかった。百人を越える野盗の存在など、聞いたことがない。
農村の襲撃は、蛮族の仕業でもなかった。森に住む蛮族たちには、金属の鎧を身に纏う習慣がない。
ガチャガチャと鳴る金属板同士がぶつかり合う音。星明りを鈍く反射させる鋼の輝き。
村を襲撃した一団の正体は、訓練された人間の集団だったのだ。
* * *
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近