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The SevenDays-War(緑)

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「近隣の村へ馬を走らせろ! かがり火で場所を探っているはずだ。今夜は火を一切使わせるな」
「了解しました!」
「森林火災の現場を確認に行かせろ。生活の痕跡が残っていないか調べる。我らと同様に火災の様子を見に来た蛮族と遭遇するかもしれん、用心させろ」
「わかりました」
 アーノルドは詰め所の兵士たちに指示を飛ばしていた。
「エルセントの騎士団へは、もしもの場合の増援を依頼しておきました」
 指示の合間を見計らった事務官がアーノルドに耳打つ。
「村が一つ焼かれているのだ。すでに“もしもの場合”とやらになっていると思うのだが、違うか?」
「仰る通りです」
「夜警に行く。留守は任せる」
「お気をつけて」

 エルセントの南に広がるのは大平原だ。
 台地になっている大森林から幾つもの川が流れ出ており、肥沃な大地を形成している。この一帯で栽培されている農作物が、周辺都市の食糧を支えている。
 そのため、魔獣対策には力を入れており、騎士団の治安維持部隊とは別の警護組織が農作物を守っている場所さえもあるほどだ。
 星明りが、平原に広がる麦畑を照らし出す。
 風が吹く度に鳴る麦穂同士の擦れ合う音が、浜辺に打ち寄せる波音のように幾重にも折り重なって流れていた。
 太陽の光が包む昼間であれば、地平までも続く麦畑の緑に囲まれたほのぼのとした田園風景なのだが、黒と灰に染められる夜は、闇と同化した魔獣に怯えなければならない。

 ―― 騎士になった。

 ―― 騎士になれば、願いは叶うと思っていた。

「隊長! 火の手が!」
 引き連れていた小隊の一人が、南の空を指し示す。
 深い藍色の地平に、炎の赤が見える。そしてそれは一気に広がっていった。
「村がっ!」
「ちくしょう!」
「やられた!」
 隊員たちが口々に叫ぶ中、アーノルドは地平に燃える炎をその瞳に映していた。
「間に合いはせん。川の向こうだ」
「しかし!」
 アーノルドは、駆け出そうとする隊員たちを呼び止め、冷静に指示を与える。
「一人は詰め所に戻れ。救護班を手配しろ。残る四人は下流の橋を渡って村へ。生存者を確保せよ」
「隊長は?」
「俺は上流へ行き、西から回り込む。襲撃したのが蛮族ならば、馬の脚で追いつけるはずだ。なに、遠目から確認するだけだ。一人でいい」
 アーノルドは馬首を返し、有無を言わせずに駆け出した。
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近