ふるさと
私の背中に少年の頃の翼が戻ることはない。
それでも、小さくともまだ生えているのならば、せめてそれだけでも精一杯に広げ、出来得る限りキラキラと輝かせてみよう。
サッカークラブの先生が、集合の笛を吹いた。少年達はボールを手に持ち、駆け足で集まってゆく。
ギブスの少年も気持ち駆け足で先生の元に走っていった。
先生はその少年の到着を待って、何かをしゃべり出した。体育座りで先生の話を聞いている少年達の中に、幼い私を見つけた。
その背中には、キラキラした大きな―ギブスの少年には負けているものの―翼があった。
次は負けるなよ、と密かなエールを送った。
そして、私は再び一人になった。
私の周りには圧倒的な空間が存在して、少年達の翼は遥か遠くに見える。
私が存在した跡を残しておきながら、今の私の干渉を拒絶している。お前は余所者なのだと突き付けてくる。
故郷とはそういうものなのだろうか。
故郷とはいうものの、ここには父も母もいない。
それどころか、かつて友と呼んだ者達さえもここにはいないのだ。