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君ノ為ニ

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3枚目のフタを開いたところで、ようやくそれが何なのかが把握できた。
どろっとした液体は赤黒く、固まりかけた大量の血。
その血に塗れ、本来の色とは別物になってしまっているが、血がついてバサバサになった毛。長い尻尾。三角形の耳。これは猫だ。
自身の血に溺れたかのように、猫は血の池に浸って眠っているかのようにピクリとも動かない。
もちろん、これは眠っているのではないだろう。
そこまで確認したところで、宮子はふらふらと倒れそうになる。
いったい誰がこんなことを?
もちろん猫がこんな残虐な自殺をするわけがない。これを施した人間がいるはずだ。そして宮子にはその心当たりがあった。
きっとあのストーカーだ。
そう思い至ったところで、携帯が鳴った。あまりのタイミングに、ビクリと心臓が飛び上がる。
ディスプレイを見ると、非通知になっていた。もしかしたらストーカーかもしれない。しかし、それならそれで、なぜこんなものを送りつけてきたのかを聞いてみたかった。
「・・・もしもし」
意を決して、通話ボタンを押す。
「宮子さん?」
聞き覚えのない声だ。
「プレゼント、気に入ってくれました?」
ドクンドクンと自分の鼓動が聞こえる。
「プレゼント? 何のこと?」
「猫ですよ。届いたでしょう?」
やっぱり、こいつはあのストーカーだ。
「プレゼントって、なんでこんな嫌がらせするの!」
宮子は電話だということも忘れて、思い切り叫んでいた。
「嫌がらせ? とんでもない。大事な宮子にそんなことするわけないよ」
気持ち悪い。
「この前の日曜日、友達2人と公園に行っただろう?」
気持ち悪い。
「その時、野良猫に手を引っ掛かれていただろ?」
気持ち悪い。
「それが、あの猫だよ」
気持ち悪い。
「宮子を傷つけた奴に、俺がお仕置きしてやったんだよ」
気持ち悪い。
「傷は治ったかい? もう大丈夫だからね。宮子は俺が守るよ」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
「もうやめて! 私はあなたなんて知らない。私はあなたになんて守ってもらいたくない。もう関わらないで!」
宮子は自分が涙を流していることにも気付かず、電話口に向かって怒鳴った。
「何を言ってるんだ。宮子も俺のことが好きなはずだろ? 困らせるなよ」
電話の向こうの声は冷静そのものだ。
作品名:君ノ為ニ 作家名:久慈午治