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君ノ為ニ

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この日も、仕事から帰ると封筒がポストから溢れんばかりに詰め込まれていた。
「もう、やめてよ...」
ため息と共に涙が溢れそうになる。
宮子は数ヶ月前から、ストーカー行為に悩まされていた。
ポストには何通もの消印のない封筒が入れられ、内容は宮子の生活を詳細に綴ったものだった。怖くなって最近では中身を確認せずに捨てている。
携帯電話は番号を変えても変えても、すぐに無言電話が掛かってくるようになる。
どこから見られているかわからず、怖くて窓もカーテンも、もう3ヶ月以上閉め切ったままだった。
宮子は封筒を全て握り潰し、部屋に入ってすぐにごみ箱に捨てた。
こんな毎日、もう嫌だ。別の街へ引っ越せばこんなことはなくなるだろうか。
まだ社会人1年目で、まとまった貯金があるわけでもない。でも、これ以上こんな毎日を送っていたら心底参ってしまいそうだ。
宮子はスーツから部屋着に着替えた。コーヒーを入れ、ソファに座る。ようやく一心地つけた。
今では誰にも見られていない安心感があるのはこの部屋の中だけだ。
家の外では、どこで誰が監視しているかわからない不安が常に付きまとっていた。
ほっと安堵の息を漏らすと、玄関のチャイムが鳴る。再び身を固くし、気配を伺う。もしストーカーだったらどうしよう...。
しかし、その心配は杞憂に終わった。宅配便ですと、聞きなれた配達員の声が聞こえたのだ。
慌てて玄関に掛けて行き、ドアを開ける。
「こんにちは。生もののお荷物です」
人の良さそうな笑顔だ。
「いつもご苦労さまです」
小ぶりなダンボール箱を受け取り、伝票にサインする。
「ありがとうございました」
爽やかな笑顔を残し、配達員は去って行った。
荷物を床に置き、差出人を確認すると実家の母からだった。いつもなら、荷物を送ったと連絡を寄越すはずなのになと思いながら、梱包を解いていく。
後から思えば、その時点でおかしいと気付くべきだったのだ。
中から出てきたものに、宮子は驚きと恐怖で声も出せずにその場に立ち尽くした。
生もの特有の臭気が鼻を突く。どろっとした液体が揺れるのが見えた。その時点で、異様な物体だということは見て取れた。
臭いは徐々に強烈になり、えづきそうになる。
全身に鳥肌が立つ。手が震え始めた。
箱のフタを1つ1つ開いて、中が確認できるようにする。
作品名:君ノ為ニ 作家名:久慈午治