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戦え☆僕らのヒーロー!

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一般的に見れば、まあ幸せな家庭だったとは思う。

母さんは僕を生んですぐに亡くなった。
だから、実の母親の顔は覚えていない。

けれど父さんが再婚し、僕が5歳になった時に来た新しい母さんは、きっと僕を愛してくれたんだと思う。

うん、嫌われちゃなかった。
例えば風邪をひいた時、こんな風に頭を撫でて貰った記憶は無いのだけれど。



視界に最初に飛び込んできたのは、妙に真剣な顔をした赤井の顔だった。
格好いいと言ってしまえばそれまでだけど、普段あまり見ないその表情は違和感を感じる。

「…起きたのか?」
そう言われ、頷いた。
体を起こそうとしてグラッと体が揺れた。
赤井が僕を抱きとめようとした、たぶん。ぼんやりとした頭はうまく働いていない。
けれど、赤井の手が僕に辿り着くより先に、抱き寄せられた。

赤井が居る方と、逆側に引き寄せられどうにか頭をそちらへ動かすと、白石先輩が微笑んでいた。

「大丈夫かい?無理しないで、ホラ、横になって。」
普段から穏やかな人だが、今日はまた一段と優しい猫なで声でそう言われ、丁寧に体を倒された。

そして、僕は白石先輩が僕の部屋に居ることで、改めて違和感を感じる。

「なんで…。」
『なんで此処にいらっしゃるんですか?』と、言おうとして自分の声が恐ろしく枯れていることに気がつく。
そんな僕の声を聞いて、白石先輩は痛々しそうに僕を見た。
「可哀想に、喉もやられたみたいだね。」

そう言われ、そういや此処最近体調が悪かったことを思い出した。

そして昨日は久しぶりに戦闘員として働いたことも思い出す。

そうか、僕、途中で倒れたんだ。
風邪で倒れるなんて、正義のヒーローとしてどうなんだろうか…そう思い、情けなくなる。

「てめ、コラ。何暗い顔してやがんだ。」
赤井がぶっきらぼうな言葉で、慰めてくれた。
こういう弱っている時に優しくされると、余計に切なくなる。

ふ、と、左足のもも辺りが妙に重いことに気がついた。
うまく動かない。もぞ、と足を動かすと「うー…。」と、唸る声が聞こえた。
ぎょっとする僕にピョコンとフワフワした頭が見えた。

「大輝くん、優一くんが困ってるみたいだよ。」
白石先輩が見かねたように黄河先輩を起こした。
ぼーっとした顔の黄河先輩がハタと気がついたように僕を見る。
「うっわー、ごめん!俺ってば気がついたら寝てたー!優一、元気になった!?」

元気いっぱいそう聞かれ、返答に困る。

「病人の前でくらい静かにしろ、黄河。」
いつもの厳しい声が聞こえ、視線を向けると、部屋の片隅に青山先輩が佇んでいた。

びっくりした、気がつかなかった。

ん?
そうするとあと一人足りない。
居ないという可能性も高いが、4人揃ってるのならもしかして、と視線を彷徨わせる。

「うふん、私をお探しかしら?」
と、声が聞こえ自分の死角になっていた真後ろの方からバァ☆と、桃川さんの顔が真上に現れる。

毎回思う、桃川さんの行動を美少女がやったらほんとに胸キュンッものだと思う。
それをガタイが良い男がやるだけで吐き気を催すんだから、ほんとに残念だ。

「ヒロミー、そんなことしたら優一余計に気持ち悪くなっちゃうよー?」
確かに黄河先輩の言葉は正論ではあるが、病人の足を枕にしていた貴方には桃川さんも言われたくないと思う。

「あの、僕、…すみませんでした。」
熱があるのだろうか、じんわりと目が潤む。

風邪ひいて倒れるなんて自己管理が出来ていない証拠だ。
子供のころはたまにあったものの、一人暮らしを始めてからはこんなこと無かった。
気の緩みからみんなに迷惑をかけてしまい、そんな自分が情けなさ過ぎて嫌になる。

ガラガラの声で謝ると一瞬、みんながシンッ…となった。

え、なんだこの空気・・・。

「…フンッ、全くだ。こんな時期に大迷惑も良いところだな。」
真っ先にそう言ったのは青山先輩だった。
「ちょっと、そんな言い方無いじゃない!」
桃川さんが唇を尖らせる。
「佐助くんなりに心配してたんだよ。」
と、白石先輩がフォローした。
「たく、お前が早く治んねぇと、俺の飯は誰が作るんだよ。」
赤井はいつもの俺様っぷりを取り戻した。
「そんなの自分で作ればいいじゃん、それより優一には俺の大事な枕としての役目があるんだから。」
相変わらずな黄河先輩節だ。

「とりあえず、目を覚ましたのなら俺は失礼する。」
青山先輩はそう言うと、部屋を出ていった。


「優一くん、体で何処か痛むところはないかい?」
白石先輩にそう言われ、首を横に振る。

ピタッと誰かの手が額に当てられた。
ずいぶんと大きな手だ、僕の顔の半分以上を覆う掌で視界が闇になった。
「うーん…熱は少しあるわねぇ。」
あ、桃川さんの手か。納得。

「あいつら許せねーよ。優一にあんな攻撃しかけるなんて!」
思い出したように黄河先輩が怒り始めた。
「確かに、ただでさえ体調の悪かったこいつにあれはねぇな。」
ふん、と、面白くなさそうに赤井も鼻を鳴らす。

・・・?
そういえば、僕、どうやって倒れたんだっけ。
今回の戦闘では僕と桃川さんが見回りをしている最中に起こった。
質より量なのか、たいして強くも無いショッカーと呼ばれる悪の組織の下っ端たちがたくさん現れた。
桃川さんが圧倒的な強さでバッタバッタと倒していく中、僕も戦っていたはずだ。

一瞬気が緩んだのは、後から赤井や青山先輩、黄河先輩、白石先輩が駆けつけてくれた時だ。

瞬間そちらに気を取られた、「っ、優一くん!!」耳に残っているのは、白石先輩の珍しく焦った声。
その声に反応して、後ろを向くと、一体のショッカーがニヤリと笑った。

そうだ、その右手には何か握られていた。
その武器と思われるそれが僕の方に向けられた…そこまでは覚えている。

とりあえず外傷は無い、と、思う。
なら、なんだったのだろうか、あの武器は…。

その疑問はすぐに解消される。

「確かにあんな攻撃さえ受けなければ、此処まで熱が上がることも無かっただろうね。」
「許せないわーっ、次あったら八つ裂きにして血祭りにしてあげましょう!」
…桃川さん、八つ裂き、の時点で十分だと思います。



「ほんと、『水鉄砲』は酷いしー!」
黄河先輩が叫ぶ。


・・・・・・・?
ミズデッポウ?

「体が濡れて、冷えちゃったみたいでね。君には悪いけど、着替えさせて貰ったよ。」
白石先輩にそう言われ、自分の服装が違うことに気がつく。

「大丈夫!亮哉がエッチィことしないように俺、ちゃーんと見張ってたからっ!」
と、黄河先輩。

「ヤダ、黄河くんたらv自分こそ視姦する勢いでがん見してたくせにー。」
と、桃川さん。

「そう言うあんたも充分エロい目で見てたけどな。涎垂れてたし。」
と、赤井。

なんと、皆さんに見守られる中僕は着替えたと言うのか…。
・・・まぁ、同性だし、そんなに・・・。

「でもさー、一番ヤバい目で見てたのは佐助だと思わない?」
突如そんなことを黄河先輩が言い出した。
「ハッ、インテリ系はたいていむっつりなんだよ。」
馬鹿にしたように赤井が笑う。