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戦え☆僕らのヒーロー!

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「ねぇねぇ、黒須くんってば、誰が本命なの?」
それは赤井と青山先輩と、白石先輩の3人が街の見回りに出ている時だった。
訓練所で訓練をすべきなんだけど先輩に当たる黄河先輩が全くヤル気が無いのと、桃川さんにはもう訓練など必要無いということから特にすることもなくダラダラとしていた。
「え?」
と、間抜けに聞き返した僕に、桃川さんは変わらず同じ質問をする。
「だぁかぁらー、誰が本命なの?」
全くもって意味が不明だ。
訝しげに見る僕に桃川さんは唇を尖らせた。
その姿はまるで少女が拗ねるような仕草だったけれど、僕の目の前に居るのはガタイの良い正真正銘の男だ。

「なによーぅ、教えてくれたっていいじゃない?」
「いえ、その、意味がよく…。」
困惑する僕を置いて、桃川さんは勝手にヒートアップする。
「だいたいさ、赤井くんは貴方の部屋に入り浸りじゃない?でも、白石くんだって妙に貴方を構ってるしィ…青山くんは表情には出さないけど貴方のこと気にしてるのは間違いないでしょ?そ・れ・に」
そこで言葉を切って桃川さんは僕の膝でスヤスヤと眠る黄河先輩を見た。
「こぉんな風に膝枕を同性にするのもさせるのも、普通じゃ無いわよー?」
そう言われ、言葉に詰まる。
黄河先輩が当り前のように膝枕を強請るからいつからか僕も慣れていたけど、確かに同性でコレは無いよな。

「確かにそうですね。」
「でしょ?総受けも私は好きなんだけどね、その場合の受けは可愛くないと嫌なのよ。黒須くんもね、こうやってそのもっさい髪の毛を束ねて、前髪上げて、眼鏡だって外しちゃえば雰囲気変わるんじゃないかしら?」

ソウウケ?なんだそれと思いながら、自分の顔を好き勝手に触る桃川さんにちょこっとビビりながらもおとなしくする。

「ホラ、だいぶ違うじゃな・・・・ぃ?」
桃川さんの表情が固まる。
僕は眉間にしわを寄せた。何かあったのだろうか?
「ちょ、と…黒須くん貴方・・・。」
茫然と呟きながらぐいっと顎を引っ張られ、痛みに呻いたその瞬間、

ぱしんッと、桃川さんの手を何かが払った。
見ると、それは僕の膝で眠る黄河先輩の手だった。

ぱっちりと目を開けた黄河先輩は睨むわけでもなく、桃川さんをじっと見たままむくりと起き上がり、僕を抱き寄せた。
「…皆で見つけたダイヤの原石だから、駄目だよ。」
黄河先輩の呟きはよくわからなかったけど、桃川さんはハッとしてバツが悪そうに項垂れた。
「ごめんなさいね、黒須くん。」
「いえ、別に気にしてません。」

僕がそう言うと、桃川さんはにっこりと微笑んだ。
「驚いたわ、でも想像以上ね。…私も参戦させて貰おうかしら?」
桃川さんがそう呟くと、黄河先輩が僕を抱き寄せるその手の力を強くした。

と、その時。

バァンンンンッ!!
と、大きな音でドアが破裂するような勢いで青山先輩が飛び込んできた。
「黒須優一。」
いきなりそう呼ばれ、僕は恐怖で震えあがる。
「は、はい。」
「…何、黄河なんぞに抱かれているんだお前は?」
青山先輩のこめかみがピクピクと動く。
かなり頭にきている証拠だ。
「今朝の話も白石から聞いたぞ?」
今朝って、ゴミ捨てのことだろうか?
僕は頭に疑問符を浮かべたまま、「はぁ。」と頷く。

「…っ、お前は、ガタイが良い方がいいのか?」
突然そんなことを言われた。
後ろから入ってきた赤井が「一番ヒョロイからって気にしすぎじゃねーの、ブルーさんよぉ?」とニヤニヤ笑う。
青山先輩がそんな赤井に殺意のこもった視線を送りながらも僕を見る。

えぇと、そりゃ男なら誰しも思うだろう。
「そうですね、ガタイは良い方がいいと思います。」
だって僕らはヒーローだ(今まで戦うシーンが一度も無いけど)。
ガタイが良くて強い方が理想だ。

と、その言葉に黄河先輩が動いた。
「俺、超訓練するねー!」
「なっ、俺が先に訓練室を使わせて貰う!」と、青山先輩。
「うふん、私が一歩リードかしらん?」と、桃川さん。
「貴方には負けられませんね。」と、白石先輩。

「ハッせいぜい足掻けよ、優一は俺が一番好きなんだぜ。」と、赤井。

ん?
なんでそんな話になったんだろう?

「俺、別に一番に赤井さんのこと好きじゃないですけど。」
赤井の怒号が響いたのはその2秒後のことだった。