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戦え☆僕らのヒーロー!

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ボスに言わせると、僕たちの個々の能力は低くない。

『ワタシガミツケタジンザイデス、ヨワイワケアリマセーン!』
そう言い切るボスには悪いけど、僕はこの人材選択は失敗だったと思う。

だってチームワークとかいうものが完全欠如している。
目の前で繰り広げられる光景に、僕はげんなりと肩を落とした。

「なんっで俺が最後に格好良く決めちゃいけねぇんだよ!」
「いけないなどとは言っていない。だが、勝つためにはお前が最後に決め技を出しても意味が無い。」
「だーかーらー、なんでだよ!?」
「その前の桃川の攻撃で敵はすでに戦闘不能になっているからだ。」
「は?」
「格好良く全員で決め技を決めるのならば、桃川を最後に持ってくるべきだ。」
赤井がふるふると怒りで震えながら青山先輩を睨みつける。
「どっこの世界にピンクが一番強い戦隊があるんだよ!?」
「此処だ。」
はっきりと青山先輩は言い切る。
青山先輩の言うことは最もだ。僕たちの戦闘能力はなんと桃川さんが一番高かった。
実際彼女(彼?)一人でも敵を全滅させられるだけの能力値だった。

「あら?私はなんだって良いのよ?そうよねぇ、出来るならば敵に攫われて救いを待つお姫様役が望みなんだけど…。」
・・・190を超えた身長でラグビー部のような肩幅で、『爽やかマッチョ』なお姫様じゃ、敵のほうだって攫いたくないだろう。

「それにしてもどの順番で技を繰り出すのかは確かに重要だね、桃川さんを最後にしたってその前はどうするべきかな…。」
「あらー、白石くんたら!私のことはヒロミで良いって言ってるのにっ。」
真面目な顔をして考える白石先輩にしなだれかかるように桃川さんが寄り添ったが、何分体型は桃川さんのがでかい。
白石先輩は「ハハッ」と爽やかに笑うけど、倒れないように足がプルプルしてる。

「最初はもう、黄河でかまわんだろう。」
青山先輩が言いきる。
「確かにな。」
赤井も同意した。
当の本人は俺の隣で鼻ちょうちんを作りながらスヒョスヒョと変な音を立てながら寝ている。
「むしろあの男は最初にヤられて塵となるのがふさわしい。」
「珍しく意見が合うじゃねぇか。あのキイロにまで見せ場なんぞ作ってやる必要もねぇ!」
眉間にしわ寄せ静かに怒る青山先輩と青筋立てて苛立たしげに睨む赤井は相乗効果で怖い。
僕は巻き込まれないようにただただ自分の気配を消す。

「ちなみに優一くんはどう思うかい?」
空気を読まない白石先輩に話しかけられる。
「…っえ?」
「ほぉ、黒須…お前話を聞いてなかったのか?」
「優一、お前までヤル気がねぇとかじゃねぇよな?」
二人の怒りの矛先が僕に向いてしまった。
慌てる僕に桃川さんが素っ頓狂な声を上げる。

「あっれー?黒須くん居たの??私、全然気がつかなかったー。」
桃川さんは本気で今気がついたように僕をまじまじと見る。
「うーん、この髪型はいただけないわねぇ…眼鏡も牛乳瓶みたいだし・・・もしかしてお笑い芸人志望なの?」
低い声で可愛らしい口調でにこにこと僕を見る桃川さんにたじろぐ。
何を隠そう桃川さんとは最初のファーストコンタクトからほとんど会っていない。
もちろん話したことなんてない。
「あらん?とって喰いやしないわよぅ。そんなに怯えないで?」
「あ、いや、…その・・・。」
「あ、もしかして照れてるの?ウソー、超可愛い!」
ぎゅっと抱きしめられる。
手つきはまるで本当に女性に抱きしめられるように優しいのに、厚くて堅い胸板と女性とは思えない腕のごつさと異様な力の強さに僕はヒッと喉をひきつらせた。

折られる!!

一瞬本気で心配した僕は意外にもすぐに離された。

見ると、白石先輩が桃川さんの肩を掴んでいる。
「優一くんが苦しそうだったから…気を付けて下さい、ヒロミ。」
白石先輩から『王子様オーラ』が発動された。
このスキルは敵が女性だった場合にはかなり有効になる。
ちなみに僕のスキルは『透明人間』だ。かなりの高確率で敵に見つからなくなる。

けれど、さすがこのメンバー最強の桃川さんには『王子様オーラ』は通用しなかったみたいだ。
「あらぁ、白石くんらしくなく、呼吸と脈拍が乱れてるわよ?な・に・が貴方をそんなに動揺させたのかしら?」
「・・・意地悪な人ですね。」

僕の気のせいじゃなきゃさっきまで友好的だったはずの白石先輩と桃川さんの間に火花が散っている。

向こうではまだ青山先輩と赤井が言いあっている。

僕の隣では黄河先輩が涎垂らしながら「まいちゃん、・・・・みきちゃ、ん・・・・・・さおりちゃん。」と、寝言で数え切れないほどの女性の名前を呟いている。


僕の明日はどっちだ?