小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

戦え☆僕らのヒーロー!

INDEX|3ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 


「なぁ、飯まだかよ!」
「もう少し、です。」
背中に投げつけられる言葉に僕はどんよりと肩を落としながらせっせとフライパンを振った。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう・・・。



「うわ、ボロくせーっ!」
それが赤井を寮に案内した時の最初の一言だった。
ちなみに僕たち戦闘員の中で寮に住んでいたのは白石先輩と僕の二人だけで、青山先輩は実家に、黄河先輩はお友達(という名の女性達)の家に住んでいる。
寮の他の部屋は研究員の人たちが居るらしいけど、ほとんどが部屋にこもりきりか、逆に研究所に住み込み状態になっているらしく顔を合わせたことは無い。
だから、赤井が僕たちと同じ寮に住むとボスから聞いたときは、正直嫌だな、と思った。
でも、赤井自身「俺の生活の邪魔しやがったらマジぶっ飛ばすかんな?」と、言っていたし関わらないように気を付ければ良いと思っていた。

・・・のに、どうして彼は僕の部屋に入り浸りなんだろうか…。

チラリと後ろを振り向くと、テレビをつまらなさそうに見ている赤井が居る。
僕は小さくため息を吐いて、テーブルの上にコトリ、と皿を置いた。

「あの、出来ました。」
「遅ぇーよ、ノロマ。」

赤井はペシッと軽く僕の頭を叩いてから席に着く。
「んだよ、コレ。俺野菜嫌いだっつったろ?」
コロッケに申し訳ない程度に添えたキャベツの千切りを彼はささっと箸で避ける。
そのくらい食べれば良いのに、と思いながらもまた余計なことを言って怒らせたくないと思い、何も言わず茶碗に箸を付けた。

「おい、コラ!」
食べ始めてすぐに突然そう怒鳴られ僕は驚いて動きを止めた。


「イタダキマス、してねーだろ!」


・・・ええー。
僕は内心の脱力感を顔に出さないように気をつけながら、小さく「頂きます。」と呟く。
なぜか赤井は満足そうに頷いている。なんで野菜を残す奴に食事のマナーで怒られなきゃいけないんだ、と僕は心の中だけでムスッとした。

「ん。」
そう言われ、醤油を渡す。
渡してから、まるで熟年夫婦のように相手の視線やしていることで何が欲しいかわかってしまった自分に嫌気がさす。
でも毎日のように夕飯を食べにこられては嫌でもわかってしまう。
だいたい、引っ越し初日から来るってどうかと思う。
「まだ調理器具が届かない。」
それが初日の理由だった。
「夕ご飯の材料を買いに行けなかった。」
それが次の日。
「料理作るのめんどい。」
それがずーっと。
でも最近はこの赤井という奴はほとんど料理が出来ないのではないかと僕は思い始めている。
めっっったに手伝うなんてことはしない赤井だけど、なんの気まぐれかお手伝いもどきをしたがるときがある。
こないだはじゃが芋の皮むきを頼んだら、そのじゃが芋はサイコロの形になって戻ってきた。
きっと甘やかされて育ったんだろう(そんなことは性格からわかるけど)。
でも、ただ料理が出来ない割には食材には煩い。これはどこ県産が良いとか、これは国産意外信じられないとか、しかも本格派で手抜きを許さない。
赤井が僕の部屋に夕飯を食べに来るようになってから僕の料理の腕は間違いなく上がったと思う。
もしかしたら、赤井の実家はシェフが居るような大きなお屋敷なのかもしれない。

最初にこの寮を「ボロイ」と言ったのだって、今まで赤井が良いところに住んでいたのではないかと疑う発言だった。
実際この寮は部屋は小さいが新しく独身寮としては十分だった。
僕たちは戦闘員というだけで此処の家賃は全額援助だし、そう考えるとかなり得だと思う。

「ん。」
茶碗を差し出され、おかわりをよそる。
僕がガツガツ食べる赤井に視線を送ると、気がついたように赤井が食べるのを止めて僕を見た。
「んだよ。」
「…いえ。いっぱい食べますね。」
「ったりめぇだろ?毎日昼はあんだけ厳しい特訓受けてんだ、腹も減る。お前の小食さのほうが信じられねぇよ。」
「はぁ・・・。」
本当は家のことを聞いてみようと思ったのだけど、たいして仲が良くない奴に家のことを聞かれるのは僕だって嫌だし、なんて切りだそうか迷ってへんな生返事を返してしまった。
そんな僕を訝しんだ赤井が、気がついたように言った。
「ああ、ちゃんと美味いぜ?お前の飯、じゃなきゃ毎日食いにこねーし。」
「え?」
「俺が美味いと思ってるかどうか不安だなんて、お前も案外可愛いな!」

・・・驚くほど身勝手な自己完結だ・・・。

一人で勘違いした赤井は何故か機嫌が良くなったらしい。
僕はその機嫌を損ねるのも厄介なのであえて否定せずに「えへへ、」と笑って誤魔化した。