戦え☆僕らのヒーロー!
「つーかさ、悪の組織って何者なわけ?」
それは、僕達戦闘員6人と2人の研究員、そして我らがボスの9人で今後の戦い方において会議をしている時だった。
いつのまにか『カルビーのお菓子の中では何が一番美味いか。』に議題が変更されてる中、赤井が唐突にそう言った。
「オヤ、アカイクンニハマダクワシイコトヲ、オハナシシテナカッタデスカ?」
相変わらず天狗のお面を被ったボスがはて、と首をかしげる。
って、ちょっと待って!僕もまだ悪の組織については詳しことは知らない。
「そういえば僕も知りません…。」
「オーゥ、タイヘンシツレイシマシタ!テキノコトヲシルノハタイセツデス。」
「ふふ、ちなみに俺達も知らないよ。」
「白石に同意だ。」
「俺もー!」
と、白石先輩、青山先輩、黄河先輩続ける。
そうなると、きっと桃川さんも知らないはずだ。
なのに声があがらない。
僕が桃川さんのほうを見ると、
・・・会議に飽きたのか超真剣な顔で小顔マッサージ中だった。
この状態の桃川さんの邪魔をすると正義の鉄拳を食らうから、僕は見なかったフリをした。
それにしても誰も悪の組織が何なのか知らないで戦ってたなんて、今さらながら結構間抜けだと思う。
でも、今まで戦ってきた奴らは特に人間の生命を脅かすような危険は正直無かった。
「あいつらの悪事って良いとこ万引きとカツアゲくらいじゃん、俺ら見ると喧嘩売ってくるけどよ。」
「ダメデスヨ、アカイクン!マンビキモカツアゲモリッパナハンザイデス!!」
まぁ、確かに悪いことだけど、赤井の言うとおり僕達が必死になって戦う相手では無い気がする。
だって彼ら警察が近くにいると『ヤベェッ、おまわりだ!』と言って慌てて逃げていく。
「カレラアクノソシキハ、ヤミノヒミツケッシャナノデス!チキューシンリャクヲモクロミイマハヒッシニチンギンアツメニイソシンデイルノデス!」
僕は聞き取りにくいボスの発言を必死に頭の中で変換した。
『彼ら悪の組織は、闇の秘密結社なのです!地球侵略をもくろみ今は必死に賃金集めに勤しんでいるのです!』
「って、まだ金集めの段階なのかよっっっ!!!」
赤井が叫ぶ。
「それで万引きとカツアゲでは…一体何年かかるんだ?」
青山先輩が呟いた。
「まぁまぁ、みんな、敵さんも頑張ってるんだから、ね?」
白石先輩は敵のフォローまでばっちりだ。
ちなみに黄河先輩を見ると、寝ていた。
おやすみ3秒、の○太くんもびっくりするだろう。
「じゃぁ、しばらく強い相手は出てきたりしなさそうですね。」
僕は安心したように呟く。
何が心配って、それが心配だ。
桃川さんが居る限り、そう簡単に負ける気はしないけど、これでも一応地球の命運を僕達がになっている。
決して責任感が強いわけじゃ無い、でも、自分の力に自信は無い。
「オー、ウレシイデス。クロスクンハチキューノヘイワヲネガッテルノデスネ…。」
ボスがよよっと、ハンカチで目元をぬぐう。
いつも思うけど、この人はいつも芝居がかった動きをするな。
「あ、ちなみにー、向こうの悪の親玉って居るの??」
小顔マッサージを無事終えた桃川さんが、ふと、気が付いたように言う。
「モチロン、イマスヨ。ソノショータイハナゾニツツマレテイマスケド…。」
ボスがふふっと意味ありげに笑う。
「…よくある話だけどよ…。」
赤井がチラッとボスを見て話し始めた。
「実は悪の親玉が、正義の味方のボスと同一人物だったりしてなーっ。」
はっはっは。と、赤井のジョークが皆の笑いを誘う。
「信司くんたら、ボスに失礼だよ。」と、白石先輩が苦笑しつつ、言う。
「そんな単純なことあってたまるか。」青山先輩は呆れ顔だ。
「そうデスよ。そんなことあるわけないデスよ。赤井くんってバ、酷いデス。」
・・・?
んん??
「あら?ボス、急に発音が滑らかになってない?」
桃川さんが僕の疑問を代わりに出してくれた。
確かに今のボスの発音は少し変だった。
「え?そうデスか?…んんっ、こほん。・・・イエ、キットキノセイデス。」
んんん??
「…動揺したのか?」
青山先輩がポツリと呟く。
動揺って…『悪の親玉=ボス』に??
「はは、まさか、ね。」
白石先輩が微笑む。
「まさか、だよなぁ…。」
赤井がヒクッと顔を引き攣らせる。
・・・僕達が真相を知ることができるのは、きっとまだまだ先になることだろう。
作品名:戦え☆僕らのヒーロー! 作家名:阿古屋珠