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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

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「おかしいわ、こんな攻撃を仕掛けてくるなんて。魔導炉まで破壊するつもり?」
 科学財産まで破壊する道理はないはずだ。侵略者の目的は、都市をそのものを奪うことだったはず。
 炎の魔の手は瞬く間に広がり、すぐセレンたちの傍に迫っていた。
「早く逃げましょう、ここは熱風がすごくて。そうだ、川の中に逃げれば!」
 帝国水没後、各地を流れるようになった大河。そこから枝分かれした水脈が地下を通って、クーロンの街にも沸きだし川になっていた。
 すぐにライザがセレンの腕を力強く引いた。
「死にたいのなら止めないわ。あれを見ても川で泳ぎたいと思う?」
 その光景を見てしまったセレンは吐き気に襲われ、思わず目を伏せてしまった。
 暑さに堪えかね逃げ惑う人々が川に飛び込む。中には火だるまになっていた者もいた。だが、川は天国でもなんでもない。
 ――川は煮えたぎっていたのだ。
 地獄の鍋で生きたまま煮られる人間。
 悲鳴が耳の奥にこびりついて離れない。
 ライザは辺りを見回して頭を猛回転させていた。
「これはただの炎じゃない。地下に逃げたくらいじゃ蒸し焼きにされるかもしれないわね。この街でもっとも安全な場所は魔導炉よ、あの場所がもっともどんな災害にも耐えられるようにつくられているわ」
 逃げ惑う人々の間を縫って街を駆ける。
 ライザはセレンの手首を掴んで引っ張りながら、セレンも決して離さないように必死についていった。混乱の中ではぐれてしまったら絶望的だ。
 逃げる途中で子供の泣き声がした。けれど、ライザは待ってくれない。セレンは耳を塞いで戦火の中を駆け抜けた。
 空から再びなにかが降り注いできた。今度は焼夷弾ではない。金属の塊だ。
 それは機械だった。骨組みだけの人間のようなロボットだった。機械の兵士だった。
 ロボット兵団がクーロンに攻め込んできたのだ。
 人々にとってそれは未知の存在だった。失われた時代の科学兵器。街の混乱はさらに高まった。
 機械兵が次々と素手で人間を屠[ほふ]っていく。武器など必要ない。大人が赤子相手に武器など使うだろうか?
 攻められていたのはクーロンだけではなかった。周りを囲んでいた新興国軍もロボットの襲撃を受けていた。
 だれもが予想していなかった、人類が予想もしていなかった敵が出現したのだ。
 ライザとセレンの前にも機械兵が立ちはだかった。
 ロストテクロノジーにはロストテクノロジーで対抗する。
 魔導銃〈ピナカ〉をライザが抜いた。
 銃口は1つであった。
 しかし、発射された激光は三本の矢となり咆哮をあげ、大地を穿ちながら機械兵を八つ裂きにしたのだ。まばゆい光で目が眩む。
 〈ピナカ〉が通った道は、まるで巨大な悪魔の爪で引っ掻いたように、建物もすべて三本線で引き裂かれていた。
 それで終わらなかった。
 次々と現れた機械兵の列を〈ピナカ〉が薙ぎ倒したのだ。
 光線は放たれただけでは終わらず10メートル以上の三つ叉の槍となり、ライザが躰ごと回転させて横に振り回すと、機械兵や建物を切断しながら薙ぎ倒したのだった。
 セレンが悲鳴をあげる。
「なんてこと、まだ建物の中にひとがいたかもしれないのに!」
「燃えて崩れそうな建物の中にいたって助からないわよ」
 瓦礫の荒野が広がった。
「さあ、行くわよ」
 開かれた道をライザが進む。
 先に見えてきたのは合金のドーム型の建物。あれが魔導炉の施設だ。
 施設は壁で囲まれ、入り口は正面ゲートのみ。逃げ場を求めた人々は壁を登って中に侵入しようと懸命だ。だが、壁の上には高圧線が張り巡らされ、それに触れたものが黒こげになって死んだ。
 ライザは正面ゲートにカードキーを差し込み、暗証番号を打ち込んだ。
 すぐにスライドしながら開かれた重厚な金属の扉。人々が流れ込んでこようとした。
 扉の前に立ちはだかるライザは、容赦なく〈ピナカ〉を放とうとした。それを必死に腕にしがみついて止めたのはセレンだ。
「やめてください」
 構わずライザは放った。ただし、天に向けて。
 咆哮をあげながら天に三つ叉の光が昇る。人々は畏怖した。艶笑するライザ。
「それではごきげんよう」
 敷地内に入ったライザとセレン。正面ゲートは静かに閉められた。
「あのひとたちを中にいれてあげてください!」
 セレンは涙目でライザに訴えたが、
「ここがどのような施設かわかっていないようね。100人、1000人の命なんかよりも重要な施設なのよ。だれかひとりが施設で事故でも起こしてみなさい。それこそクーロンだけでなく、周辺地域まで汚染されて死の荒野に化すのよ」
「だからって目の前のひとを見捨てるなんて!」
「そういうの綺麗事っていうのよ、シスター・セレン」
 空が紅く燃え上がった。
 この施設にまで炎の塊が降ってきた。
「中に入れば安全よ!」
 ライザはドーム施設に急ごうとした。
 しかし、その目の前に炎の塊が――違う、炎のような花魁衣装を着た女が舞い降りたのだ。
 炎の車輪に乗り、現れたのは火鬼だった。
「お久しぶりでありんす」
 艶やかに狂気を孕んだ表情。火鬼の顔半分を覆うメタリック。機械の片眼が紅く輝いていた。