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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

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 防御フィールドを展開していた〈インドラ〉だが、魔導砲の直撃を受けて大きく船体を損傷させ、煙を上げながら墜落する。はじめから堕ちるのが目的だ。関係ない。
 轟音を響かせ〈インドラ〉は〈ベヒモス〉の口の中に突っ込んだ。
 そして、その場で〈インドラ〉は魔導砲を放ったのだ。
 雷鳴が轟く。
 無数の龍に似た稲妻がうねり狂いながら〈インドラ〉と〈ベヒモス〉を絡め取った。
 沈黙した。
 〈ベヒモス〉の司令室は暗闇に閉ざされ、完全にエネルギー供給をストップしてしまっていた。
「おのれ、捨て身で来るとは……人間とは恐ろしいものだ」
 暗闇の中でアダムは辺りを見回した。
「機能が生きている者はいるか?」
 暗闇の中で火花が散っている。そこら中からだ。〈ベヒモス〉の機器類から鬼械兵まで、〈インドラ〉の魔導砲で感電してしまったのだ。〈ピナカ〉の直撃を受けても平気だったアダムだけが立っていた。
 艦内にアダムは通信電波を飛ばした。
《全員この艦を捨てて退避せよ》
 そして、司令室から一瞬にして消えた。アダムが立っていた場所には、換わりに鬼械兵が現れた。
 アダムが空間転送で向かったのはエンジンルームだった。
 〈ベヒモス〉は停止してしまったが、そのエネルギー源は無事だった。
 秤の上に乗せられいる大きな袋。これが〈ベヒモス〉のエネルギー源だった。〈大地の袋〉と呼ばれるこの魔導具は、大きさは人の胴ほどの袋だが、その重さは大地と同等。この重さ、重力をエネルギー変換して、〈ベヒモス〉を動かしていたのだ。
 アダムは大地と同じ重さの〈大地の袋〉を軽々と持ち上げた。
 そして、空間転送で〈ベヒモス〉の外にいた鬼械兵と場所を入れ替えた。
 灰と化しているクーロン市内は鬼械兵と人間の戦闘が激化していた。
 さらに人間と人間の戦いも――。
 〈レッドドラゴン〉の銃口の先にはフローラが立っていた。
「勝ち目のない戦いよ」
「それは人間が機械にって意味か、それとも俺様はおまえにって意味か?」
「両方」
 フローラの身体から槍のような植物が放たれた。
 銃声が吼えた。
 腹を無数の蔓で貫かれ、トッシュは苦しそうな顔をしてよろめいた。
「なぜ避けなかった?」
「あなたこそ」
 苦しげに囁いたフローラも腹を押さえていた。その指の隙間から滲む鮮血。
 膝をついたトッシュ。
「相打ちなんて最悪だな……女の死に様なんて見るもんじゃない。なんで撃たれたんだよ!」
「どちらに転ぶかわからないけれど、戦争はもうすぐ終わるわ。はじめから戦争が終わったら自ら命を絶つつもりだったの」
「罪滅ぼしか?」
「この星のためにやったんだもの、後悔なんてないわ」
 トッシュの傷口からゆっくりと蔓が抜かれていく。
 驚いた顔をするトッシュの顔色が少しずつよくなっていく。同時にフローラが枯れていく。
 全身から水分が失われ、年老いて目も呉れないほどの老婆と化していく。
 自分の腹の傷が癒えたのに気づいてトッシュは悟った。
 ゆっくりとトッシュはフローラに近づき、その息を確かめたが――。
「……胸糞悪い」
 フルフェイスを脱ぎ捨て地面に叩きつけた。
 そして、煙草を加えて火を付けた。
「こんな糞不味い煙草はじめてだ」
 戦争はまだ終わっていない。トッシュは〈レッドドラゴン〉を握り締め大地を踏みしめて歩き出した。
 一方、〈インドラ〉の操縦室ではリリスとジェスリーが地獄から蘇った敵と対峙していた。
 首をもがれても、また新たなボディを手に入れ復活した火鬼だった。
「此処で会ったが100年目、息の根を止めてあげんす!」
「懲りない子だねぇ」
 リリスはぼやいた。
 ジェスリーは物陰に隠れている。
「わたくしは戦闘用ではありませんので、見守っていてもよろしいでしょうか?」
「年寄りをこき使うんじゃないよ」
 しかも、リリスは岩だ。
 しかし、火鬼とて炎の使い手である。
 炎と岩。
「わっちの炎は岩を溶かす色気があるでありんす」
 扇から放たれた炎は金属の床を溶かしながら、リリスの身体を包み込んだ。
 にやりと笑う火鬼。
 炎の中で妖女は艶やかに微笑んでいた。
「餓鬼に惑わされる妾ではないぞよ」
 石触手が伸び、生身だった火鬼の目玉を貫き、後頭部から飛び出した。
 火鬼は口をわなわな振るわせた。
「地獄で……待ってる……」
 顔面から石触手が抜かれ、リリスの身体に戻っていく。
 そこに立っているリリスの姿を見てジェスリーは驚いた。
「そのお姿は?」
「やっと此奴の精神を全部喰ろうてやったのじゃ」
 そこに立っているのはまさしく妖女リリスの姿。だが、その身体には光沢があり、黒い御影石のようであった。形状は妖女リリスだが、その素材は石なのだ。
「じゃが、まだ自由に動けぬ。運んでくれるか?」
 頼まれてジェスリーがリリスを持ち上げようとしたが、足が数センチ浮いただけだった。
「見た目から計算できないほどの質量があるようです。わたくし1人では運べそうもありません」
「仕方ないのぉ」
 リリスが浮遊した。
 ふわふわと不安定に空を飛ぶリリスを見てジェスリーは、
「飛べるのならわたくしに運ばせなくてもよかったのでは?」
「今試したらできたのじゃ」
 2人は操縦室を急いで出た。
 ルオ、トッシュ、リリス、ジェスリー。残るアレンはアダムの前に立ちはだかっていた。
「その袋持ってどこ行く気だよ?」
 黒い眼帯で片眼を覆うアレン。
 その身体の周りには風が渦巻いていた。