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CROSS 第1話 『特殊部隊『CROSS』』

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『こちらに救援要請は入っていない』
「了解。今の態勢をしばらく維持する」

 ドアの向こうには、この艦のブリッジが広がっていた。そのブリッジは、幅は30メートルほどで奥行きは20メートルほどあり、さまざまな機械がブリッジの後ろ半分の壁などに設置されていた。ブリッジの前半分は、この艦の操舵席と前方を見渡すための大きな窓になっていて、指揮官の部屋でも見られた異次元空間がその窓の向こうに広がっていた。
 そして、そのブリッジの真ん中辺りに、山口が座る指揮官専用の席が備え付けられていた。一回り大きめのイスで、両方の肘掛けには、専用のコンピューターが埋め込まれていた。

 山口と佐世保の到着に気づいた男の隊員が、操縦席から振り返って彼に話しかけてきた。
「イギリス料理でも食べて、お腹を壊したんですか?」
彼の名前は、ガリアという。イギリスネタのエスニックジョークを言った彼は、金髪碧眼のフランス人の青年なのであった。年齢は20代前半だ。この艦の主任ナビゲーターで、階級は少尉である。
「いや、ガリアにすすめられたカタツムリを食べたからですよね?」
同じようなジョークでガリアに応酬したのは、この艦の通信主任の男だ。ガリアをニヤリと見ている。
 茶色の髪と瞳を持つ彼の名前は、ウィルといい、イギリス人であった。年齢はガリアと同じで、階級も彼と同じ少尉だ。

 山口少佐が指揮する特殊部隊CROSSには、彼や佐世保のような日本人だけではなく、多くの外国人の隊員がいる。さらに、「他の世界」出身の隊員もいる。見方によれば、統一感が無いと思われるかもしれないが、仲間同士の連携はきちんとできている。

「1回で呼ばれて来れないの?」
山口に呼び出しのアナウンスを何度もした少女の隊員が、彼に文句を言った。怒りを通り越して呆れていますといった、やれやれという口調だ……。彼女は、CROSSの制服ではなく、白色と赤色のワンピースを着ていた。
 その少女の隊員こそが、「他の世界」出身の隊員なのだ。彼女の名前は椿であり、階級は准尉であった。ブリッジでは、火器管制を担当している。
 ただし、彼女は正規の隊員ではなく、契約式の隊員なのであった。それも、軍人の交換交流制度によってだ。条件や期間による契約が終了すれば、彼女はCROSSを辞めて、自分の世界へと帰っていく。
 CROSSから交換交流制度に出した隊員は、とても有能な男だが、彼女も同じぐらい有能なので、作戦の遂行に影響は無かった。彼女の武器は万能包丁なので、始めは能力に疑問を持っていた。しかし、モンスターの駆除に大活躍を見せてくれるので、山口だけでなく隊員全員が、彼女を信頼していた。

「悪いけど、そうみたいだね」
山口はそれだけ言うと、自分の座席へと向かう……。