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花束を持つ手にはナイフを

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 運転している篠崎の怒声に高部はため息をついた。パソコンはあまり得意ではないのだ。そんな高部の横から平井が手を伸ばして、キィを叩いた。とたんに画面がぱっとかわり、目的のビル内部のものとなったらしい。三階建ての小さなビルでの一階、二階、三階と階ごとの見取り図が用意されていた。その次には組織のボスから幹部の写真付きのデータが見ることが出来た。
 いつもながら、ビルの地図や相手の組織を知りえるフウマの情報量に舌をまく。
 不意に車が止まったのに高部は思わず顔をパソコンにぶつけそうになるほど前のりになった。
「ついたぜ」
 高部は今後は篠崎の運転する車に乗るのだけはよそうと誓った。
 車の窓から外を見ると、目的のビルから数メートルほど離れた路上にワゴン車が停められていた。
「じゃあ、篠崎は残って」
「俺も行くぜ」
 運転席から後部席に身を乗り出して、銃を手に取った。
「おい、お前、逃げるとき、どうするんだ。車がないと困るだろう」
「大丈夫だろう。俺等強いし」
「そういう問題じゃなくてな」
「鍵しめとくさ」
 篠崎の言葉に高部は眉根をひそめた。逃げるためにも車は常に一人がいるというのが決まっているのだ。
「早く終わらせればいいだろう」
「知らないからな」
 高部は言い返すと、ドアを開けた。肩に黒いスポーツバックを持ち、颯爽と進む。そのあとを篠崎と平井が続く。
 幸い夜の街は自分の快楽を満たそうとするので高部たちに視線を向ける者はいない。
 ビルとビルの隙間を通り、裏口のほうへと行くと、スーツを着た若者がガードしている。
「どうする?」
「平和的にいきましょう」
 平井が言いながら前へと出た。高部たちは止める前に平井は前へと出てきていた。カードマンたちが気がつき、平井の前へと近づいてきた。平井は薄笑いを浮かべて、手を動かした。そのとたんに男たちが動きをとめ、顔には苦悶の表情を浮かべた。
 何が起こったのかと眼を見開き見ることでようやく、何が起こったのか理解できる現象だ。
 糸だ。
 細く透明な糸が男たちの首に巻きつき、締め上げているのだ。平井は薄笑いを浮かべて片手をあげた。とたんに男たちの首から血が噴出し、悲鳴もあげることもなく男たちの体は力を失い、その場に倒れた。
「本当は時代劇みたいに首に刺してみたいんですけどね。篠崎さん、丈夫で、どこまでも飛ぶ糸を開発してください」
「おう、いいぜ。時代劇みたいにやりたいな」
 久しぶりの現場に興奮しているのはわかるが、少しは押さえて欲しいものだ。
「いくぞ。もたもたしている暇はない」
 高部は言うなりドアを蹴飛ばして前へと走り出した。肩にかけていたスポーツバックのファイナーを開けて、愛用のあれを取り出す。久しぶりに手にとると、とても馴染む。営業をやめてからは、もう二度と握らないと思っていたのに。
 前から音を聞きつけたらしい男たちが通路に出てきた。高部が走ってくるのに彼らは誰もが驚いた顔した。とたんに撃たれて倒れていく。
「オラオラ、死にたいやつは顔だしな。一発で天国と地獄に落としてやるからよ」
 背後で篠崎が嬉々として銃を撃っている姿が高部の脳に思い浮かんだ。
 篠崎の銃の腕前は確かだ。だから安心して背中を預けることが出来る。階段にさしかかったのに高部は一瞬だけ迷い、二階を目指した。
「篠崎、地下を頼む。平井は、二階を俺は三階に上がる」
 二人に言うと高部は階段を駆け上がった。途中で下の騒動を聞きつけて降りてきた男たちと鉢合わせると、高部は迷うことなく、それを引き抜き、男たちの首と胴を叩き落した。バックを床に捨てて高部は再び三階を目指した。二階のことは平井に任せておけば大丈夫だろう核心はあった。三階の廊下にいた男たちは三人。高部はそれを奮い一人を殺すと、拳で一人の鼻先を折り、もう一人には蹴りをいれて地面に沈めた。息は乱れない。思ったよりもブランクは体にきていないのかもしれない。そう思った矢先に銃の音に高部は反射的に身を右へと傾けた。頬に熱い痛みが走る。銃弾が掠ったらしい。昔だったら、完全に避けられたはずだ。――俺も年取ったなぁ
 高部は苦笑いをして前を見た。
「お前か」
 アーダムは無表情で高部を見つめた。
「ここがよくよわかったな」
「うちはいい情報屋が多くてな」
 高部は、片手にもていたそれを両手に構えた。アーダムの顔が露骨に興味をもったという風になった。
「可笑しな、武器だ」
「俺の愛用の武器でね」
 可笑しいだろうといわれることはわかっていた。このご時勢に、日本刀を武器にする物好きはいないだろう。
 高部は息を一つついたあと、前へと踏み込んだ。アーダムが銃を向けてくるが、それも距離が近いと意味がない。それはアーダム自身もわかっているのだろう。銃を捨てた。懐からナイフを取り出すと、高部の刀の一撃を受け流し、片足をあげて蹴りを放った。高部はアーダムの攻撃をぎりぎりで避けると、刀でアーダムの腹を刺した。
「痛いだろう。マーリアだって、お前が連れ去った女の子だって、痛かったんだ」
「……生憎、痛みは感じない」
「なに」
 アーダムのナイフを持つ手が動いた。
「俺は薬漬けで、痛みは感じないんだ」
 高部の肩に痛みが走った。アーダムのナイフが高部を突き刺したのだ。
「強いから、そいつに従うしかないだろう。俺たちみたいな弱いやつは」
「弱いか、お前が……そうだな。弱いかもしれない。叫んでも助けはないかもしれない。だが」
高部は懐からナイフを抜き取り、アーダムの首に刺した。
「それでもマーリアは動いた。お前を信じてな!」
 高部は笑ってアーダムの首に刺したナイフを抜き取ると、アーダムの体はよろけて床に転がる。口が何かいいたげにぱくぱくと動くのを高部は見つめていた。高部は刀を振り上げると、アーダムの首と胴を叩き落した。血が飛び散り、高部のスーツを汚したが、スーツであれば替えなんて会社のほうが用意してくれるはずだ。高部は奥の部屋に足を向け、ドアを開けた。
 スーツを着た神経質そうな男と横に越えた男が驚いた顔で高部を見た。その顔はパソコンで見て知っていた。高部はまずは神経質そうな顔をした秘書のほうを刀で首を切り落とすと男のほうへと歩いていった。男が慌てて懐から銃を引き抜き、銃口を向けてきても高部はさして慌てはしなかった。
「お前らみたいなのがいるから、俺はこの仕事をやめられないんだよ。くそったれが」
 高部は笑いながら男の腕を叩き落し、そのあと腹を切り、次には顔といたるところを刀で斬り、最後に首を突き刺した。
 男が事切れるのを見て仄暗い快楽と満足を得て高部は再び笑った。
 満足して部屋を出て一階にいくと篠崎が笑って手をふっていた。その後ろにフウマの後方支援のメンツが動いた。
 その中で人の良さそうな男が笑いながら高部に近づいてきた。高級なスーツに優しそうな顔立ちは、この場にあまりにも不似合いだ。しかし、この男は笑いながら人を殺せる。
「ルール違反だぞ。人の仕事、横取りして」
「始末書は書きますよ、片桐さん」
 片桐の言葉に高部は憤然と言い返した。元を正すとこの男が自分にマーリアたちを預けたのが悪いのだ。
作品名:花束を持つ手にはナイフを 作家名:旋律