獏の見る夢
「自分には何の価値もないって思ってた。自分より苦しい思いをしている人間なんていないって思ってた。だから夢喰いになった。私の現実より辛い夢なんて無いって思ってた」
男が腰をふるたびに少女の体も小刻みに震える。
「でも皆辛かったの。辛いのは私だけじゃ無かった。皆辛くて苦しくて、それでも表面だけ取り繕っていたのね」
少女の声に耳を傾けていると、背中に大きな痛みが襲った。母が俺を殴っている。
「私はそんな事にも気付かずに不幸と言う守られた空間で生きていた。そしてさらには悪夢と言う空間からも卑怯な手を使ってまで逃げようとした。本当に屑だわ」
痛みが背中から全身に回る。どこをどう殴られているのかが最早分からない。滅多打ちというのはこういう事を言うんだろう。
「だからこの殉教はきっと当然の結末なんだわ。知らない人の悪夢を取り除いて、前を向いて歩けるようになってもらうの。そして私は罰として永遠に苦しむのよ。夢と言う名の現実の中で」
少女の上に乗った男が小さく呻いて動きを停止した。男のものが引き抜かれた少女の中心からは血の混じったピンク色の液体がドロリと溢れ出てきている。
殉教……? 当たり前の結果……? そうなんだろうか……?