獏の見る夢
「怖いでしょ。怖いよね」
冷たい声。 振り向くと同じように映像の渦に囲まれた少女が立っていた。
「でもね、これで終わりじゃないよ」
そう言うと少女はそっと自分の衣服を巻くりあげた。
「……っ!」
思わず息を飲んだ。少女の体には無数の傷があったからだ。
「これは親から虐待された‘現実’。ね、あなたも見てみて。あなたの体」
少女の言葉には圧倒的な力があって、俺はなぜだから逆らう事が出来ない。自らの衣服を巻き上げると、そこには少女と同じ場所に同じ傷があった。
「な……!」
記憶が‘蘇る’。そうだ、俺は母親に虐待されていた。ごめんなさい! ごめんなさい! 何度謝っても母は許してはくれない。バッドで思い切り脛を殴られる。痛みで思わず床に伏した。その後も何度も何度も殴られる。痛い。ごめんなさい。許して! だが赦しはこない、決して。何日も食事をしていないものだから脳も回らない。ごめんなさい以外の言葉が見つからない。ああ……。ああ……!
「あなたは夢喰い装置で私と繋がったの。だからあなたの悪夢は私の現実。私の悪夢はあなたの現実」
少女の声に意識を傾け、殴られながらも少女の姿を目で捉える。少女は……少女は……