獏の見る夢
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事務所の前を一人の少女がうろついていた。
透けるような白い肌、闇よりも深い黒くて長い髪。そしてこの世のものとは思えない程に少女の顔立ちは美しかった。だが、目だけがどこか虚ろで遠くを見ているようだった。
「君、こんなところで何しているんだ?」
俺がそう声をかけても少女は何も答えない。無視をしているのかと言ったらそういうわけでも無さそうだった。
「おい!」
今度は少しだけ荒っぽい声を出し、少女の肩をわし掴んだ。
それでも少女はにへらっと顔を一瞬歪めて笑っただけだった。
俺は確信した。こいつは白痴だと。そして俺はある考えの元に、少女を事務所の中へと引きずりこんだ。扉の札を使用中に変えて置く事も勿論忘れなかった。