獏の見る夢
拾いモノ
それからも俺は毎日のように夢を喰った。金は恐ろしいほど手に入った。その金で違法ドラッグに手を出した。‘眠れなくなる薬’――それに手を出し、俺は殆ど眠る事が無くなった。体はやせ細り、力が上手く入らない。しかしその薬を手にすれば、目は輝き何でも出来そうな気分になるのだ。勿論、眠る事もある。24時間完全に寝ないだなんて、それは無理というものだ。
しかしその眠りの時間は短時間でなければならなかった。もしも常人のように六時間も七時間も眠ってしまったらと思うと精神に震えがくる。あんな夢の世界に何時間もいられるはずがない。
もう辞めてしまおうか。何度そう思ったか分からない。装置のスイッチを押す度に例えようもない恐怖が襲いかかるのは事実だ。しかし今や俺の体は薬無しでは生きられない。そんな事はいくらガタのキテいるこんな俺でも十分に予測できる。そして薬を手にする為には金が必要なのだ。辞めるわけにはいかなかった。
一体なぜこんなにも生きたいのかが分からない。いっそ死んでしまった方が楽だというのに。それでもなぜか死ぬ気にはなれなかった。恐ろしい悪夢よりも尚、現実の死が怖いのだ。
しかしそんな俺に神様はプレゼントをくれたようだ。
俺はとてつもないシロモノを拾ってしまった。……きっとこれで――俺は救われる。