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獏の見る夢

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第三の夢



 ギラギラと輝く太陽の下、健康的な汗をかきながら俺は友人と街中を散策していた。

「暑いなー。どっか入るか?」
「そうだなー、そう言えばお前さー」

 友人が何かを言いかけたその時――突如として凄まじい揺れが体を襲った。何だ? これは? 何なんだ? ほんの一・二秒の戸惑いののち、これは地震だと脳が認識した。それもちょっとやそっとの地震では無い。視界がガクガクと揺れて、体が思わず放り投げられるような感覚。

「うわぁっ!!」

 思わず声が出る。友人の方へと視線を動かす。あいつは大丈夫だろうか? 揺れる世界で必死に友人を探した。いた! あいつも俺の方へと向かってきている。

 その時――――

 聞いた事もない破裂音のような音が鼓膜を揺さぶった。音はどこか高い所から聞こえてきた。上を見上げるとガラス張りのデパートメントの、そのガラスが割れて落下して来ていた。

「わぁっ!」
 
 慌てて近くにあった屋根の下へと潜り込む。ザンッという音を立てて、さっきまで俺のいた場所にガラスが突き立ち、そして盛大な音を立てながら激しく割れた。破片が飛び散り、俺の腕を掠める。痛みに耐えながらも周囲に視線を馳せる。あいつは? あいつは大丈夫か?
焦る気持ちを押さえながら、視界を巡らせる。いた! 無事だ!

 あいつは俺に向って手を振り上げ、こちらへと向かって必死に足を動かし、そして、


 ザンッ!!


 あいつの体は上から降り注いできたガラスに真っ二つに切り裂かれた。

作品名:獏の見る夢 作家名:有馬音文