獏の見る夢
*
あくる日もまた客は来た。
青白い顔をした少年だった。そして少年の横には心配そうな顔で付き添う両親の姿があった。
「どうぞ」
そう言っていつも通りソファへと案内する。
少年の母は少年の肩を抱きながら、一つ頭を下げた。
少年の母親が言う事には、少年は去年の夏にS市を中心に起きた大震災に出くわしてしまい、PTSDを発症してしまっているのだという。忘れがたい記憶が夢となって蘇り、いつまでも心に重くのしかかる現実。それを何とかしたいと、少年の父親とも相談し本日この事務所に足を運んだとの事だった。
「今から装置に入って貰い眠りに意識を奪われるまで、その一番嫌な夢を思い描かなければなりませんが、それは大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫です」
心配そうな両親の横で、少年は小さく呟いた。
「そうですか。では、始めましょう」
いつもの通りに札を使用中にし、装置の中へと身を沈める。スイッチを押す手が少しだけ震えた。これは夢だ。夢なのだから、何も怖い事など無い。何度も心の中でそう反芻してから、そっと目を閉じた。薄暗い闇の中へと意識が彷徨い始める――――