獏の見る夢
*
ハッとして目が覚めた。
指でそっと目元をなぞると、涙の筋が出来上がっていた。
隣の装置Aを見ると、女性は装置から出る所だった。
俺の姿を目にとめると、彼女はにっこりと微笑んだ。そこには先ほどまでのどこか怯えたような様子は微塵もない。
「有難うございました! それでは私はこれで」
彼女はハキハキとした口調でそう言うと、サッサと事務所から出て言ってしまった。
バタンっという扉の閉まった音を聞いてから、俺はのそりと身を起こし装置から出てソファへと向かった。
夢の中で殴られた手足が、現実でも痛むような気がした。そんな事、あるはずもないのに。目の前の机には金の入った封筒が無造作に置かれている。その厚さを見ると、どこか心がほっとした。
――そう、これも夢。全ては……ただの‘仕事’だ。
今日はこの金をどんな風に使おうか? 何かを始めてみるのもいいかもしれない。俺の人生を変える何かを……。未来にはまだ――希望がある。