獏の見る夢
第二の夢
教室。
俺は自分の席へと歩みを進める。そして自分の席を見て驚愕した。
『死ね』『ブス』『バカ』『目障り』『学校来るな』
ありとあらゆる罵りがマジックでビッチリと書かれている。これが――俺の机。俺の席。
椅子を引いて席に座ると、べちゃりとした感覚が尻に伝わる。何事かと腰を浮かせて確認すると、そこにあったのはビチャビチャに濡れた汚い雑巾。
「あははは!」「くせぇー!」「見た?」
嘲笑が耳を支配する。雑巾を手にとって、床へと落とした。
「ちょっと! あたしが置いてあげたのに、何勝手に取ってるワケ!?」
すかさず浴びせられる非難の声。
同時に声の主である気の強そうな女子がツカツカとした足取りでこちらに向かってきて、雑巾を拾い上げるとそれで俺の顔を拭きまくった。
「あははは! ブッサイクな顔を綺麗にしてあげるね〜♪」
なんでこんなに楽しそうなんだろう? 何がそんなに楽しいんだろう?
腐った牛乳のような匂いが顔中に塗りたくられる。気持ち悪い。
「やめっ……!」
思わず手で振り払った。
雑巾が宙を舞い、目の前の女の肩に乗る。
「……マジあり得ないんだけど」
女がそう言うと周りの人間が一斉に自分の元へと集まってきた。男子も女子も皆一様に同じ表情をしている。憎い物を見る顔。汚い物を見る顔。