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サヨナラ、ママ。

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#06 そのコが来たのは6月だっだ。



そのコが来たのは6月だっだ。

どうしても猫が飼いたくなって
ネットの里親探しで見つけた雑種の子猫。
家の軒下で産まれてしまい、
困っていたと20代の姉妹が連れたきた。

3月半ばに生まれたというそのコは、
すごくやせ細っていた。
危なっかしい足取りでヨチヨチ歩く姿の
首に巻かれた安っぽい赤いリボンが、
なんだかとっても不似合いで、やけに目立っていた。

「ちっち」という名前をつけた。
姉妹が帰ると、そのコのリボンをとり
抱き上げて、何度も何度も抱きしめた。
抱きしめながら、
「ちっち」「ちっち」と何度も名前を呼んだ。

猫を育てるための勉強済みだったから準備は万端!
あれやこれや、お水をあげたりご飯をあげたり。
でも。ちっちはいっこうに食べない。水さえ飲まない。
何時間、ちっちを見つめていただろう。
何も食べようとせず、次第にぐったりしていく子猫。

どうもおかしい。どうしよう。
このままじゃ死んじゃうかもしれない。

慌ててネットの姉妹に現状を報告し、どうしたらいいか訊ねた。
もう、心配でワラをつかむ心境。

「あっ! 連れて行くコ、間違えちゃいました!
元気なコが他にいますけど、交換します?」

「こ、こ、交換っ??」
そんなこと、出来るわけないじゃんっ!!!
じゃあ、このコはどうなるわけっ???
「ちっち」はどうなるわけっ???
「はい、そーですか」って交換???
出来るわけないじゃんっ!!!

ネットで調べた。
マーガリンを指に塗ってみた。
。。。。。食べない。。。。。。
マヨネーズを指に塗ってみた。
。。。。。食べない。。。。。。
チーズ!!チーズ!!はどう??
チーズを小さくきざんで指に置いた。
。。。。。食べた!!! 食べたよ!!!
泣きそうだった。嬉しくて嬉しくて。

その後、何日かはチーズで過ごしたけれど。。。
具合はいっこうによくならない。
どうしよう。どうしよう。
動物病院に駆け込んだ。
わけわかんないから、自分の保険証まで持ってた。
「あなたの保険証はいりませんよ。笑」
笑われた。ちょっとハズカシかった。

「風邪、ひいてるみたいですねー。注射をうっときましょう」
「体調がよくなったら、予防接種の注射もしましょう」
注射を打たれるちっち。
打たれる瞬間、「にゃー」と鳴いた。

私はその日、生まれて初めてのライブの日だった。
ずっとずっと「出来るわけないじゃん」。
そんなふうに決め付けていたライブ決行の日だった。

ちっちは頑張った!!!
まだ生まれて3ヶ月。でも痛い注射を頑張ったんだ。
私だって頑張る!!!
臆病な私の背中を一番先に押してくれたのは
猫のちっちだったんだ。

作品名:サヨナラ、ママ。 作家名:さんななご