小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

サヨナラ、ママ。

INDEX|8ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

#07 4年ぶりの再会。



“すみれ”に会ったのは、約4年ぶりだった。

猫4匹、犬1匹と彼と暮らしていた夏。
6年間一緒に暮らしていた彼は、いなくなった。

その時の私は、バイトが忙しいことを理由にして
引っ越しの片付けをすることが出来なかった。
彼の部屋だった小さな部屋。
どうしても、その部屋に入ることが出来なかったから。

親と相談した。動物があまり好きではない両親。
「犬にするのか、猫にするのか、猫なら1匹だけ」
と選択をせまられた。

私の大切な家族だった、猫4匹。
一番最初に家族になってくれた“ちっち(♀)”。
ちっちと、優しすぎるが故、
早く死んでしまった“モリオ”の忘れ形見の
“ハヤシオ(♂)”と“すみれ(♀)”。
そして彼と暮らし始めてすぐの雨が降る夜。
雨に濡れた体で、一生懸命にしわがれた声で餌をねだってた
野良猫だった“アメタ(♂)”。

そして、彼がいなくなる3ヶ月前に家族なった
まだ子犬だった“むーむ(♀)”。
むーむはまだ、生まれて5ヶ月しか経っていない。
そんなむーむを見捨てることは出来なかった。

私はむーむと暮らすことを選んだ。
そして、どうか猫1匹だけ、実家で飼ってほしいと願った。
「どれにするんだ?」

一番最初にもらわれていったのは、アメタだった。
アメタはもともと野良猫だったせいか、誰にでも人懐っこく、
アメリカンショートヘアのコみたいな好まれやすいルックスだった。
小田原にいる両親の知り合いが迎え入れてくれるという。
アメタはきっと、どこに行っても愛してもらえると思った。

「最後まで一緒にいれなくてごめんね。
でも、ここにいた時より、もっともっと幸せになるんだよ」
アメタの背中を撫でながら、何度も何度も繰り返した言葉。

「今日、アメタが小田原にもらわれていきました」
彼へメールをしたけれど、返事はなかった。

その次はハヤシオとすみれだった。
父の田舎の山梨へもらわれていった。
すみれは、もともとすごくカワイイ顔立ちだったためか、
田舎のいとこがもらってくれることになった。

「最後まで一緒にいれなくてごめんね。
でも、ここにいた時より、もっともっと幸せになるんだよ」
ハヤシオとすみれ。
2匹の背中を撫でながら、何度も何度も繰り返した言葉。

「今日、ハヤシオとすみれが山梨にもらわれていきました」
彼へメールをしたけれど、返事はなかった。

「すみれはっ? すみれはどこにいるの?」
山梨のいとこの家に着くと、一番先に出た言葉。
「すーちゃんねぇ、今、出かけてるみたいなのよー」。

そうか。。。。会いたいな。会えるかな。
庭先で何度か名前を呼んでみた。
すみれは姿を現してくれない。

いとこの久子お姉ちゃんと、庭で落花生の話をしていた時。
びゅんっと横切る影がひとつ。
「あっ!!すみちゃんっ!!」
慌てて追いかけた。
すみれ、待って! すみれ、どうか、顔を見せて!
昔から一番の機敏さを誇るすみれ。
絶対に人間の手につかまるようなコではなかった。

「すみちゃんっ! すみちゃんっ!」
何度か叫ぶと、庭の裏先に隠れようとしていたすみれの足が止まった。
「。。。。。あれ??」
そんなカンジな顔をして、こちらの様子をうかがっている。
「すみちゃん、覚えてる?? 今、とっても幸せなんだってね。
久子お姉ちゃんに聞いたよ。よかったね、よかったね、すみちゃん」。

すみれは、後ろ向きになっていた体を、
こちら側にわざわざ向けて、ちょこんと座ってくれた。
そして、私の話をきいてくれたんだ。

元気なすみれに会えて、すごく嬉しかった。
うちにいた頃よりも、ものすごく幸せな日々を過ごしている
すみれに会えて、本当に嬉しかった。

あれから約4年。もう、彼へのメールはしなかった。


作品名:サヨナラ、ママ。 作家名:さんななご