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サヨナラ、ママ。

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#10 うちの「普通」。



うちが、「普通」じゃないことを知ったのは
27歳の時だった。

家庭の事情で引っ越しをした朝。
父と母と祖母と4人で朝ご飯を食べた時、
気を遣って、どう振る舞っていいかわからず
ものすごく疲れたんだ。

だって、みんなでご飯を食べるなんてこと
なかったことだったから。
ひとりでご飯を食べるのが、うちの「普通」だったから。
夜ご飯は、お膳に作られたご飯を持って
2階の自分の部屋で食べる、それが日常だった。

「今朝さー、家族でご飯、一緒に食べてー、
もー、すっごい疲れたよ〜」
電話で愚痴った私に、友人が教えてくれた。
「え? 家族で食べるのが普通だよ」

3人兄弟の末っ子。
男2人に女ひとり。

うちは「封建社会」だった。
年功序列、男尊女卑。
私は一番下の人間なので、
何も言う権利もなく、そのまま従うこと。
それが、うちの「普通」。

私が食べたいもの? 好きなもの?
今の気持ち? 学校はどう?
そんなこと、訊かれた記憶もない。
「あんたはコレ」。
そう言われたものを受け入れるのが
うちの「普通」だったから。

そうだよね。
私の好きな食べ物、好きな飲み物。
父も母も兄も知らない。
父や母の好きな食べ物も、私は知らない。
次男の兄のことも知らない。

長男の兄の好きな食べ物、嫌いなこと。
それだけは家族の誰もが知っていた。
まるで暗黙のルールみたいに
家族中のみんなが共通で感じていたことは
多分、きっと。
長男の兄をとにかく尊重すること。
ただ、ただ、それだけだった。


作品名:サヨナラ、ママ。 作家名:さんななご