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文殊(もんじゅ)
文殊(もんじゅ)
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私の弟ハチと

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歩いてる人たちがびっくりした顔をしたり、振り返ったりするくらいの猛スピードで駆け抜けた三人に私は笑う。
結局ハチは、久喜宮君に対して「俺に代われ!」と途中でほぼ無理やり役目を交代した。
もちろん、久喜宮君は不満そうな顔をしたが、ハチは嬉しそうに自転車をこいだ。
その間も伴内君は黙々と、誰とも言葉を交わさずにペダルを踏み続けた。
返ってくる反応も三者三様である。
顔を赤くして首を振る伴内君に、満足そうに汗をかいて笑うハチ、「いえ」と少しだけ微笑む久喜宮君。
若いなぁ、なんて心の中で思いながら駐輪場を四人で歩く。
その足を止めたのは、二人の男子学生だった。
こう言うと、明らかに不良が出てきたみたいだけれど、違う。
一人は大人しそうな子だし、もう一人は別に不良っぽくはない、あくまでも今らしい感じの子。
私があえて「子」を使ったのは、二人とも一年生みたいだったから。
「……」
ハチが顔をしかめる。
まずいぞ、ハチの手が出る早さといったらない。
私は利き手じゃない左に、鞄を持ち直した。
「竹部って、お前か?」
今っぽい子が口を開くと、不意にそんなことを聞いてきた。
その一言が気になってしまって、怒ると無口になりがちなハチより先に私が答える。
「あたしも竹部だけど、何か用事かしら?」
私が答えたことに驚いた三人の視線と同時に、二人の視線もこっちを向いた。
聞いてきた彼が少しキツい印象の目を丸くして、すぐ元通りにする。

「おかしいな。ハチには、姉なんていないはず……」

かすかに呟かれたその言葉に対して、私は過剰に反応しそうになった。
背中に嫌な汗が伝いそう。
というか、現に伝ってるんじゃないかな。
あぁ嫌だな、今日は体育があるから余計な汗なんてかきたくないのに。
そんなことよりも。
どうして、ハチなんてあだ名を知ってて。
なんで、姉がいないなんて思って。
それを「おかしい」とかって、言えるのか。
聞きたいことが頭の中で氾濫して、私は思わず引きつった笑みを浮かべてしまった。
『竹部八尋に姉がいたら、何か問題でもあるの!?』
思わず叫びそうになる。
それを普段は比較的ありそうなくせに、いざという時はほとんど消えてしまう理性の欠片がどうにか留める。
拳を握った私を庇うように、ハチの背中が目の前に出てきた。
もしかしたら、相手を守ろうと思ったのかもしれないけど。
作品名:私の弟ハチと 作家名:文殊(もんじゅ)