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文殊(もんじゅ)
文殊(もんじゅ)
novelistID. 635
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私の弟ハチと

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ハチの特別な事情を今、ほぼ理解できている人間は。
心の中で何度も謝りながら、私は少し俯いた。
「え、先輩は?」
「いいよ、一時間目英語だし。ハチ疲れてるだろうから、代わりに自転車こいでやって?」
そう言って背中を押す私を、兵吾君が何度も振り返りながら改札の向こう側に行き、ハチと言葉を交わす。
「姉貴!」
いいのか、と目線で訴えるハチに早く行け、遅刻するぞ。と笑う。
なんだろう、もう今日学校行きたくないなと心の中で思っていることは表面に出さずに。
ハチが誰かと話している。
ちょっと、本当に遅刻する気なの。
私がやきもきしながら見ていると、久喜宮君が手招きする。
「先輩、大丈夫そうです!」
笑顔の彼に対して首をかしげながら、とりあえず歩いていく。
改札の向こう側に出ると、ハチが階段の上から誰かと一緒に降りてきた。
「姉貴、遅刻しないで済むぞ!」
笑顔のハチより少し向こう側に、背が高くてハチと同じくらい体格のいい男の子が立っている。
「こいつ、同じクラスの伴内宗平!」
「ん……?」
そうだ、なんだかどこかで見たと思っていたら。
「剣道部……の、新入生?」
「あ、はい、そうです……」
軽く挨拶を交わして駐輪場へ行くと、兵吾君が学生服の上を脱ぎ始めた。
「兵吾?」
「ハチ、俺こぐの交代するよ」
心の中でさっき言ったことを思い出す。
久喜宮君は真面目だから、きっと気にしてたんだろう。
だけど、ハチはさっきとは打って変わってもう元気だから良いような気もしてしまった。
「え、じゃぁ姉貴が伴内の後ろ?」
「あたしはそれでいいけど……伴内君は大丈夫かな?」
「だ、大丈夫です……!」
急に声をかけたからか、少し驚いた表情の伴内君に「ごめんね、重いけど」と笑いかけると、首を思い切り振られた。
女の子慣れしていない感じが明らかで、思わず苦笑してしまう。
剣道部の男子が同じクラスにいるけれど、そういうのとはまるっきり雰囲気が違う。
今時珍しいな、と思いながら私は伴内君の背中につかまった。
ハチも小さくないどころかむしろ体格の良いほうだけれど、伴内君の背中はもっと男らしい背中だった。
前から見たらそう変わらないように見えた体格も、近くで触るとはっきりと違いがわかる。
その背中が私がつかまった途端少し縮こまった気がして、微笑んでしまう。

「ありがとう、伴内君。ハチと久喜宮君もね」
作品名:私の弟ハチと 作家名:文殊(もんじゅ)