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戦場の兵士

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 サムはいい答えだと俺の頭をなでつけると、自分の小銃(ライフル)と共に残り少ない残弾を全て俺に預けた。
 あんたは何を使うんだ?そう聞く俺にサムは、カリスから預かった短機関銃(サブマシンガン)を叩いて、
「これからの相棒はこいつだ。カリスの分まで入ってる。俺の分はその小銃(ライフル)で払え。」
 といってニッと笑った。
 俺の小銃(ライフル)は、サムには秘密にしていたが、動作不良を起こしていた。どうやらサムはそれを知っていたようだ。
 サムの小銃(ライフル)は、壊れた俺の小銃(ライフル)と違ってよく手入れがされている。元々頑丈で整備性のよい小銃(ライフル)だが、メンテナンスを欠かすとすぐに悪くなってしまう。よく手入れされた小銃(ライフル)を持つと何故か自分まで強くなった気がして不思議だった。
「とりあえず、太陽を背に出来るところまで移動するぞ。付いてこられるな。」
 いったいどれだけ一緒にいると思っている。あんたがいけるところなら俺だっていけるさ。まあ、俺がいけてあんたがいけないところはあるかもしれねぇけどな。
「言うようになりやがったなガキンチョめ。」
 サムは愉快そうに目を細めると、姿勢を低くし瓦礫となったビルの谷間をひっそりと移動し始めた。
 俺の手元には手榴弾(グレネード)があと一つだけ残っている。これが何らかの切り札になればいいのだが。しかし、相手とやり合うとなればその距離は100メートルを遙かに超えるだろう。そんな距離で、しかも不利な体勢から装甲車の下の僅かな空間に向かってピンポイントに投げられるのであれば小銃(ライフル)など必要ない。いっそのこと、これを銃弾にして火薬の力で発射できるものがあれば、ひょっとすると戦場というものが大きく変わるかもしれない。俺はそんなことを考えながらサムの背中を追った。
 俺たちはなるべく太陽を背にして装甲車に近づいていく。夜に廃墟を動き回るの危険だ。特に空気が冷えると音が遠くに届きやすくなる。俺たちは僅か数百メートルの距離を一日もかけて移動する羽目となった。
 そろそろ冬がやってくるのだろうか。吐く息が白くなる夜の冷え込みはとても酷い。俺は、何とか息が白くならないように注意して装甲車を監視することとした。
作品名:戦場の兵士 作家名:柳沢紀雪