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戦場の兵士

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 機関銃(マシンガン)が金切り声を上げ、着弾する音がまるでここまで聞こえてきそうな程の土煙を生み出していく。壕の側面に設置されたそれは、まるで敵の脇腹に槍を突き刺すように深く、深く進入していく。
 絶え間なく排莢される空薬莢のチリチリとした音は否応なしに俺から冷静さを奪っていくように思えた。
 俺は銃床(ストック)を肩に強く当て直すと、汗で滑り|引き金(トリガー)を握りしめてしまいそうになる手を何とか押さえ込みその時を待った。
 敵はもうすぐ側だ。まだか、まだかと待ち続ける俺の背後から上官の「打ち方始め!!」の号令が妙に遠くに感じられ。俺はまるで条件反射のように|引き金(トリガー)を引き絞った。
 今俺の目の前で倒れ込んだ黒塗りの敵兵は俺の放った弾丸に当たったのか、それとも隣にいるサムか、それともカリスか。
 そんなことを思う暇もなく、俺は素早く遊底(ボルト)を引き次弾を装填すると薄煙にまみれる向こうへとそれを送り出した。

***

 自分が生きているのか死んでいるのか、一瞬それが分からなかった。敵が俺たちの射程に入り俺は仲間とともに射撃を始めた。
 機関銃(マシンガン)は一台しかなかったが、敵の数とその密度のおかげで着実に数を減らすことが出来ていたようだ。しかし、その次に来たもの。それは爆音と共に俺の視界と意識を切り取った。
 何があったのか。側で倒れているカリスに、生きてるかと聞くと、彼は身体をもぞもぞとさせ何とか起き上がった。
「ああ、不思議なことに無事だ。メガネも割れていない。」
 頭を打ったのか、鉄兜の上から両手で抱え込む姿は少し心配するが、特に目立った負傷もなさそうだ。
 サムは何処に行ったのだろうか。俺は周りを見回した。そこにあるのは身体が吹き飛び二つに分割された胴体から臓物をまき散らしている上官、頭に風穴を開け意識の宿らない視線で空をにらみつける同僚。その他大勢の死骸が散乱し、とても生きている人間がいるようには思えなかった。
 サムは死んだか。先ほど戦争が終わった時のことを話していたせいか。なら、サムには悪いことをしてしまった。
「おめぇの下だ。とっとと退きやがれ。」
 肩を落としため息をついた俺の下から無遠慮な声がわき上がってきた。なるほど、馬鹿に柔らかい地面だと思ったら人肉だったか。
作品名:戦場の兵士 作家名:柳沢紀雪