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戦場の兵士

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 太陽の光が強い、俺が聞いたことろによるとシモン・ザイケフは望遠鏡(スコープ)をつけたがらないというらしい。何でも太陽の光をレンズが反射するのを嫌うためだということらしいが、俺の小銃(ライフル)にも望遠鏡(スコープ)はつけられていない。
 これなら五分五分かと思いたいが、そんな楽観論は霧と一緒に消し去った方が良いだろう。
 サムが目を覚まし、俺の側までやってきていた。
「どうだ?」
 と聞くサムに、俺はダメだと答えると、サムはまあそんなもんだなといって側に腰を下ろした。
 影から出るなと言う俺の忠告を守り、サムも極力身体の動きを押さえ込んでいた。しかし、寒さで震える身体を押さえ込むのは困難だ。
 冬の晴れた朝は本当に底冷えする。特にこの地方は雪こそ降らないもの気温の低さは国一番と噂されるほど寒い。
 まだ冬口に入った程度だというのにこの寒さでは真冬では人が住めなくなってしまうのではないか、そんなふうにも感じられた。
 ん…?俺は目を細め、小銃(ライフル)の照星からフォーカスを遠くへと映した。
 何か、視界の端で動いたような。ただの風で揺らめいた布きれか?いや、今は風は吹いていない。ならば、重さに耐えきれず崩れ落ちた瓦礫か何かか?いや、それならもっと派手な音がするはずだ。
 何か言いたげなサムを視線で制した俺は身じろぎせず、じっとそれをにらみつけた。
 ・・・・いた。奴だ。
 奴は俺たちの方を見てはいなかった。その視線の方角からすると、どうやら昨日俺が置いておいた毛布の方に目をとられているらしい。
 あれが役に立ったな。俺の口元は自然と持ち上がり、さっきまで平静を保っていた心臓は突然オーケストラのドラムのごとく早鐘を打ち始めた。
 少しは落ち着け。ここで失敗をすれば全てが終わる。
 俺はサムに指で奴のいる方向を知らせると、サムは何とか俺に聞こえる程度の声で、
「俺が向こうから奴を牽制する。その間にしとめろ。一発でだ・・・いいな。」
 ああ、分かっているさ。ここで出来なければ何のためにカリスは死んだ。あいつの分はサムが、サムの分は俺が持つ。そして、俺の分は奴にくれてやる。カリスの敵だ。
作品名:戦場の兵士 作家名:柳沢紀雪