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白草(しろくさ)
白草(しろくさ)
novelistID. 631
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曇り空、その向こう側に

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 ちょっとだけ強がってみて、私は雲に覆われた空を見上げて。そして溜息。空は隙間なく白っぽい雲に覆われていて、隙間なんてものは存在しない。これでは、太陽を見ることは叶わないだろう。
「そりゃ、人も少ないわけだ」
 でも、人がいないわけではない。日の出以外の何かを求めて、この海岸に集まって来た人たちがいる。焚火。集まっている人は、日の出が見れないにも関わらず、わいわいがやがやと、楽しそうな声で話をしていた。確か、去年もこんな感じ。
 でも、焚火は暖を取るためのものではなくって。もちろんそれもあるんだろうけど、火の中心には大きめの鍋が設置されて、毎年、知らない誰かが知らない私たちのために豚汁を用意してくれている。
「あぁ、良い匂いだなぁ」
 初日の出なんてどうでもいいのだ、きっと。みんな、この豚汁目当てで来ているに違いない。
「豚汁は日の出が見れるか見れないかに関わらず存在する……と」
 私は急に鳴りだしたお腹を左手で摩りながら、焚火の方へ足を向けた。
「明けましておめでとう!」
 私が近付くと、豚汁を配っていたおばちゃんがにっこりと笑いながら、新年の挨拶を告げた。
 おめでとう。私も、新年初の人の温かさに触れて、自然と笑みが零れる。
「日の出、見れませんね」
「見れなくても、日は昇るんだから」
 なんて、おばちゃんの近くに腰を下ろして、受け取った豚汁を飲みながら、二三言葉を交わし、集まった私たちは身体の中と外から温まって、日が昇る時間を待った。
「お嬢さん、ここに来るのは始めてか?」
「いいえ、もう何年も正月に来ています」
「天気予報、見なかったのかい?」
「見ましたよ。でも、暇だったので」
「はは、そりゃあいいや」
 集まった人たちは、当然のように知らない人ばかりだった。去年の正月に集まっていたのは、小さな子供のいる夫婦や、私たちのようなカップルが多かったような気がする。今は、おじさんとおばさんしかいない。もしかしたら、町内会の人たちかもしれないと、私は話をしながら考えていた。
「お嬢さんくらいの年だと、彼氏とか連れて、来てたりするのかい?」
「はぁ、まぁ、去年までは」
「おや。じゃあ、今年は何で一人なんだい?」
「おいおい、そんなこと聞いてやるなよ」
「礼儀ってもんがねぇよなぁ」
「いいえ、お気になさらず。あんな男、別れて正解だったと思います」