曇り空、その向こう側に
私は理解する。目が覚めたばかりの私は、正月早々ゴミ収集車が来るのか気になって、収集場所にゴミが捨てられていないのか、確認しようとしていたのだ。
「じゃあ、ついでに見てくるか……となると、煙草が必要か」
別に、放火するつもりもないけど、集荷場所まではちょっと歩くし、正直手持無沙汰で口無沙汰なのだ。こんな単語が存在するのかなんて知らないけど、気にしない。
机の前まで戻り、煙草とライターをダウンのポケットに入れて、これで出撃準備完了だ。
「いざ、闇夜へ」
なんて、ちょっとだけ旅立ちの勇者みたいに粋がって、私はドアを開けて外に出る。
月は、まだ欠けていた。
「元に戻るまで、どれだけかかるんだろう」
気にはなったけど、そこまで月に愛着があるわけでもなかった。何より寒いし。「お好きにどうぞ」なんて突き放すような言葉を紡いで、煙草の白煙を肺に送り込んで、ほっとする。
結局、収集場所にゴミは一個も捨ててなかった。これで、一月くらいゴミを捨ててないことになるけど、冬だから、大丈夫だよね。
◆◇◆
正月早々ついてないな。見上げた空模様に、私は小さな溜め息を吐いた。
あれから結局眠る気にもなれなくて。焦って初詣に行くような時間でもなかった。どうせ明日は休みなんだし、時間は捨てるほどあった。だから、初日の出を見に行こう、って、天気予報を確認してみたのだけれど、表示されたのは曇りのマーク。
「うーん、日の出、見れないのか」
と言いつつも、でも、なんて私は思ってしまう。
曇りといっても、始終太陽が見えないわけじゃないのだ。私の住む場所では、月が見えた。あの場所では、太陽が見えるかもしれない。時間は有り余ってるんだし、このままぼんやりと部屋の中で時間の経過を待つだけなんて、ねぇ。
「まあ、所詮予報だし」
だから私は呟いて、脱ぎ捨てたダウンをもう一度着た。
車のキーを数分で探し出し、オンボロのマイカーへと乗り込む。一時間くらい走った所に、毎年のように初日の出を見に行った海岸はあった。
去年まで彼と私の二人で訪れていた海岸には、天気予報のせいもあってか、人の姿はほとんどなかった。ただ、焚火を囲むようにして集まっている人の姿がある。
「別に、寂しいなんてことはないんだけどね」
作品名:曇り空、その向こう側に 作家名:白草(しろくさ)