ある夜に
ギターは埃まみれだった。
「私ね、確かにお兄ちゃんの言うとおり、有希お姉ちゃんの代わりにはなれないかもしれない。でも、私が有希お姉ちゃんの代わりに……」
「そんなのなれるわけ……」
「あるよ」
由貴の一言。今までの過去に囚われていた自分にはなかった、はっきりとした一言。
「確かに有希お姉ちゃんはいないけど、お兄ちゃんは未来を見ていかないといけないんだよ!」
その言葉は、どこか有希に被るところがあるような気がして……
……
「……お、お兄ちゃん?」
「なあ、由貴……」
「なあに? お兄ちゃん?」
「ギターで、何の曲が聞きたい?」