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限り無く夢幻に近く

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 あれはいつからだろう。比較されることが重荷になって。
 身動きが取れなくなる。息が詰まる。

『お隣のアキちゃんは……』

 母は当たり前のように幼馴染みを引き合いに出した。そのたびに俺は口を尖らせる。

『あいつと俺は違う。一緒にすんな』


 ――どうして、こんなに。
 そう溜め息をつかれたのが悔しかった。

 理由なんてなかったんだ。
 仕方ないじゃないか。理由なんてなかった。俺の方こそ知りたいよ。



「ツカサ?」
 いつのまにか深く意識の奥に沈んでいたらしい。名前を呼ばれただけで驚いてしまって、危うく足をとられそうになる。
「どうしたの。また眠くなった?」
「違ぇよ。ちょっと考えごとしてただけだ」
 そう。と、彼は首を傾げる。腑に落ちないといった感じだ。それに首を振って見せて、心配ないことを示す。
 なぜか、自分が今何を考えていたのか思い出せなかった。なんとなくどうでもいいことだった気がするけれど。深追いしようとするとすぐ、窓外の田園のように遠ざかっていく。

 うん、大丈夫。今は歩こう、果てがある限りは前へと。だって、深く考えても仕方ない。悩むのはいやなんだ。

作品名:限り無く夢幻に近く 作家名:篠宮あさと